教員採用試験に落ちたらどうする?一次と二次で違う「翌年の戦い方」と進路5つの選択肢

こんにちは、金井志津乃です! 

教員採用試験、不合格でした……。来年また受けるのか、仕事はどうするのか、講師をするのか就活をするのか。何から決めればいいのか分かりません。

その気持ち、すごくよく分かります。まず最初にお伝えしたいのは、教採の結果はあなたの人格や人生を評価するものではないということ。そのうえで、進路を決める前に確認してほしいことが1つあります。「一次で落ちたのか、二次で落ちたのか」——ここで来年の戦い方がまったく変わるんです。

この記事でわかること
  • 不合格通知が届いたら、いちばん先に確認すること
  • 「一次で落ちた」と「二次で落ちた」で、翌年の戦い方がどう違うか
  • 補欠・追加合格の扱い(12月まで結果が動く自治体があります)
  • 教採に落ちた後の進路5つの選択肢と、どんな人にどれが向いているか
  • 講師をしながら受け直して合格する人がどれだけいるか(必須ルートではありません)、教育委員会の公表データ
  • 来年に向けて、今のうちにやっておくべきこと

教員採用試験の不合格通知を目の当たりにすると、不安と絶望にのみ込まれてしまいますよね。「自分なんかを採用してくれるところなんてあるのかな」と、自信をなくして弱気になってしまったりもします。私自身も、教採では高校地歴で新卒一発合格をさせていただきましたが、それまでの大学受験では連敗続きで「このまま、どこにも合格しないんじゃないか」と毎日不安な気持ちで勉強していた時期がありました。

でも、教採の結果は、あなたの人格や人生を評価するものではありません。教採はあくまであなたの人生の一部であって、人生のすべてではありません。だから、どうか自己否定することなく、あなたにとって最も良い選択をしてください。

この記事の根拠

  • 制度・人数・合格率は、各都道府県・政令市の教育委員会が公表している令和9年度採用の実施要項と選考結果から。私の自治体別記事で出典付きに整理したものを引用しています
  • 合格率など「◯÷◯」で求めた数字は、公表された受験者数・合格者数から私が算出したものです
  • 受講生の事例は、個人が特定できないよう一般化しています
  • 執筆:金井志津乃(高校地歴の教員採用試験に新卒合格・高校教員として6年半勤務・教採スクール「教員の学校」運営・YouTubeチャンネル登録者1.7万人・大学講演・教採専門誌「教員養成セミナー」への執筆経験)
目次

進路を決める前に|通知を開いたら、まずこの3つを確認する

「来年も受けるかどうか」を考える前に、手元の結果通知書を最後まで読んでください。ここに、来年のスタートラインを左右する情報が書かれています。

① 一次で落ちたか、二次で落ちたか二次まで進んだ人は、翌年の第1次試験が免除される制度を持つ自治体が全国にたくさんあります。「また筆記から全部やり直し」とは限りません
② 成績・ランクが書かれていないか栃木県はA・B・C、宮城県はA・B・C、山口県はA〜D、島根県は面接の段階、福岡県は個人面接と模擬授業の評価が通知されます。このランクがそのまま翌年の免除の権利になる自治体があります
③ 補欠・追加合格の記載がないか愛知県の補欠は令和9年度採用で310人。栃木県は12月上旬まで、山口県・愛媛県は12月25日まで、宮城県は1月15日まで結果が動きます。9月の発表で終わりではありません

※出典:各自治体の令和9年度採用 実施要項・選考要項、愛知県教育委員会「令和9年度採用 第2次試験合格・補欠者について」(2026年8月28日)。

「一次で落ちた」と「二次で落ちた」は、来年の戦い方が違います

同じ「不合格」でも、次の一年でやるべきことは正反対と言っていいほど違います。

一次で落ちた場合二次で落ちた場合
足りなかったもの多くの場合、筆記の得点。一般教養・教職教養は足切り要素の強い試験で、おおむね7割が一つの目安になります筆記は通っている。差がついたのは面接・模擬授業・小論文などの人物試験
翌年の入口原則、一次から受け直し。ただし科目単位で点数が残る自治体もある(京都府・奈良県・山口県・福井県など)第1次試験が免除される自治体が多数。福島県・広島県は「二次を受けた」だけで免除、栃木県・山口県・宮城県などは成績ランクで免除
次の一年の重心筆記の得点力を上げる。ただし筆記に全振りすると翌年また二次で止まります面接・模擬授業の作り直し。準備の中身を変えて二次に戻る
まずやること今年の得点開示を取る(自治体により開示制度あり)今年の面接で聞かれた質問を、記憶が鮮明なうちに全部書き出す

「二次で落ちた=惜しかったけどゼロからやり直し」だと思い込んでいる方が、本当に多いんです。でも実際には、二次まで進んだ実績を翌年に持ち越せる制度が全国にあります。福島県は「第二次選考試験を有効に受験して名簿登載にならなかった人は、翌年度の第一次選考試験を免除」と要項に明記していますし、広島県は「前年度の第2次選考試験の全ての試験項目を受験した人」が対象。栃木県は二次不合格者のうちAランクの人が一次全免除です。

自治体ごとの条文と条件は、専用の記事にすべて表でまとめました。まずはご自身の自治体があるかどうかを確認してください。

■ 【教員採用試験】二次で落ちても翌年は一次免除?補欠・追加合格・前年度成績による免除がある自治体まとめ

そして大事なのは、「講師をしていること」が免除の条件になっている自治体がとても多いということ。岡山県・愛媛県・香川県・福井県・青森県・滋賀県・富山県・岐阜県・埼玉県・千葉県などは、「二次まで進んだ実績」+「その年も講師として現場にいること」で一次が免除されます。講師をしながら受け直すのは、遠回りではなく、多くの自治体が用意した本線のルートなんです。

補欠・追加合格の方へ|「待ちながら準備する」が正解

補欠や追加合格候補の通知が来ている方は、宙ぶらりんの時期が続いてしんどいと思います。主な自治体の扱いを整理しておきます。

  • 愛知県:令和9年度採用の補欠者は310人。4月1日以降に順次採用され、翌年3月31日までに採用されなければ失効。そして翌年は第1次試験が全て免除される特別選考があります
  • 岡山県:補欠は「若干名」(直近5年で9・8・3・5・2人)。3月31日までに名簿登録されなかった補欠者は、4月1日から常勤講師等として優先的に任用。条件を満たせば翌年は一次全免除(C①は前年度に第2次試験の受験資格を得ていることや、同一の校種・職種・教科等・枠での出願などが条件)
  • 栃木県は12月上旬頃まで(令和9年度採用から追加合格者制度を新設・二次不合格のAランクから追加)、山口県・愛媛県は12月25日まで、宮城県は1月15日まで(二次の総合成績ランクBから追加名簿登載)結果が動きます
  • 兵庫県:二次の結果は「合格」「条件付合格」「不合格」の3つ。条件付合格は追加合格となることがある状態で、追加合格にならなくても要件を満たせば翌年の一次が全部免除

※出典:各自治体の令和9年度採用 実施要項・選考要項。補欠制度そのものを置いていない自治体(神奈川県・埼玉県・奈良県・和歌山県・群馬県・北海道・東京都など)でも、名前を変えた同じ役割の仕組みがあることが多いので、要項で確認してください。

■ 全国の教員採用試験 発表日一覧

結果が出た直後の9月〜12月にやってほしい3つ

進路を決めるのと並行して、ぜひやってほしいことがあります。この時期に燃え尽きてしまうと、次のスタートが切りにくくなるんです。1月以降は年度末の締めで本当に忙しくなりますし、4月・5月には次の年の要項が出て出願が始まる。腰を据えて動けるのは、実は年内だけなんですね。

① 今年の面接質問を記録する記憶が曖昧になっていない今のうちに、聞かれた質問をとにかく書き出す。冷静に振り返ると「この文脈でこの質問だから、面接官はこういうことを聞きたかったのかもしれない。なのに私はこう答えていた」と客観視できます。合格していようといまいと、必ず役に立ちます。
② 習慣化する不安で行動を起こしにくいときは、意志の力ではなく習慣の力を借りる。友達と週2回の模擬授業をやると決める、勉強会の日を先に押さえる。自分の番が来るなら、やらざるを得ませんよね。外部からの強制力を借りるのがいちばんやりやすいです。
③ 体を動かす不安や恐怖は脳の扁桃体が活発になるほど大きくなります。ジョギング・ウォーキング・筋トレでその働きは抑えられます。何かしら行動を起こしていると、不安な気持ちは小さくなっていきます。

そして、今年の面接質問を報告フォームから教えていただくのも、実はいちばん効率のいい振り返りになります。人に伝えられる形に書き出す作業そのものが、「あのとき何を聞かれ、自分は何を答えたか」を整理してくれるからです。もちろん、それが同じ自治体を受ける来年の受験生の力にもなります。

■ 教採 過去問データベース|受験報告フォーム

受験者の声

フォーム「情報提供のお願い」に寄せられた一言から、匿名で抜粋しています。

  • 「数年間講師をしていて、毎年『まあ今年もだめかな〜』と諦めながら試験に臨んでいました。しかし、多くの生徒、尊敬する先生方に出会い一念発起して頑張りました」(島根県・中学校・2024年)
  • 「昨年度2次で不合格になってしまい、どうしたら合格できるのか、自分で模索したところ、金井先生の動画に出会い、小論文の例題や、面接カードを活用し、2次試験の準備に当たることができました」(岐阜県・高校・2024年)

教採に落ちた後の進路|5つの選択肢

ここからが本題です。考えられる選択肢は、大きく次の5つだと私は考えています。

進路こんな人におすすめやるべきこと
1 公立校の講師公立校の教諭になることに迷いがない人。現場で実績を積んで受け直したい人教育委員会のHPから講師登録(年度末1〜3月に募集する自治体が多い)
2 私立学校の教員公立にこだわらない人。公立の講師の声がかからなかったが教員はやりたい人各校のHPで募集要項を調べて受験(1〜3月に募集をかける学校もあります)
3 塾講師公立・私立にこだわらず、「教える力」をとことん高めたい人各社のHPから募集要項をチェックしてエントリー
4 大学院に進学専門性を高めたい人。研究が好きだった人。学生をしながらじっくり対策したい人出願して受験(第三次募集で1月頃まで出願できる大学院もあります)
5 民間企業教員の道に迷いがある人。一度社会人経験をしてから教育現場に活かしたい人転職エージェント等に登録して情報収集

大事なのは、いま決めきらなくていいということ。実際にその道に進むかを決めるのは後でいいんです。でも情報収集だけは、5つとも今のうちにやっておいてください。何か非常事態があったときに、調べてあったからこそ「じゃあこれにしよう」と決断が早くなります。

1|公立校に講師として勤務する

「絶対に公立校で教諭になりたい」という思いが強い人には、来年春から講師として勤務しながら再受験するのが最もメジャーな選択肢です。

メリットデメリット
今年の教採で不足していた力を、現場で高められる面接官の期待値が上がる分、それを上回る対策が必要になる
一生懸命働く姿を管理職が見てくれていることがある仕事に慣れないうちは忙しく、筆記の学習時間が取りにくい
教師力を高めれば、他の受験者より信用度が高い講師登録をしても、必ず仕事が来るとは限らない

「信用度が高い」というのは、こういうことです。学校で働いたことのない方が実際に働いてみて、1年目で退職したり病休に入ってしまうことは、残念ながら少なくありません。採用する側はそれを知っています。講師は、実際に学校現場で働いたうえで「やっぱりこの仕事を続けたい」と言っている人ですから、採用後のリスクが低いと見てもらえるんです。

いっぽうで、講師をしているからこそ面接官の期待値は上がります。「講師をしているんだから、もっと内容の濃いことを話してほしかった」となると、教員未経験でも将来性を感じた学生や社会人のほうを採用したい、と思われてしまう。期待値を上回る準備が要る——ここは正直にお伝えしておきます。

常勤講師と非常勤講師、どちらがいい?

常勤講師非常勤講師
業務内容ほぼ正規の教諭と同じ。分掌・学年団の役割・部活動、学校や自治体によっては担任も基本的に受け持った授業のみ
給与1年目は正規採用とほぼ同等(ただし年数を重ねるほど昇給ペースに差が出ます)。ボーナスあり1コマあたりの単価制で、おおむね2,000〜2,500円程度。条件を満たせばボーナスが出る仕組みに変わってきています
教採との相性面接で語れる経験を積みやすい。ただし忙しく、筆記の学習時間は取りにくい学習時間を確保しやすい。ただし担任・分掌の経験は積めない
共通点どちらも期限付きの契約。身分の保証がない点は同じ

担任経験のない非常勤講師でも、教採で合格できるんですか?

できますよ! 私の受講生にも、非常勤で担任経験がない立場から高校地歴などで合格された方がいます。「この人は担任も任せられそうだ」と面接官に感じさせられれば、非常勤でも合格はできます。そのために、空いた時間で学級経営・保護者対応・授業力の自己研鑽を積んでおいてください。事実として経験は少ないので、そこは「持っていますよ」と面接で提示できる形にしておくことが必要です。

講師になるには

  • 自治体の教育委員会のHPで調べて講師登録をする(教採の出願時に講師登録の項目がある自治体もあり、その場合は不合格の段階で自動的に登録されていることも)
  • 募集は年度末の1〜3月が多い
  • ただし、登録したからといって必ず仕事が来るとは限りません。「ずっと電話が来なくて無職の日々が続いた」という声も少なくありません。特に小学校は自治体によって差があります。だからこそ、他の選択肢の情報収集も並行してください

■ 教員採用試験で講師が有利な点と不利な点

数字で見る|講師をしながら受け直して受かる人は多い(必須ではありません)

ここは、旧版の記事には無かった部分です。「講師をしながら受け直す人が、実際にどれだけ合格しているのか」を、教育委員会の公表データで見てみましょう。

自治体公表されている数字
兵庫県令和8年度採用の合格者のうち60.9%が過年度卒業者。特別支援学校は85.9%、高校は69.6%。新卒だけの試験ではありません
広島県・広島市令和8年度採用の名簿登載者のうち過年度卒が393人(38.4%)。そのうち279人(71%)が臨時的任用職員。登載者のおよそ4人に1人が、講師をしながら合格した方です
群馬県令和8年度採用の最終合格520人のうち376人(約72%)が特別選考による合格。単独で最も多いのが臨時的任用教員等経験者特別選考の166人(R7=185人・R6=140人・R5=113人)
埼玉県令和9年度採用の志願者で、臨時的任用教員経験者A選考1,277人・B選考432人・本採用教員経験者160人=1,869人が「働きながら受ける」ルート。合格率はB選考44.8%・A選考30.4%(一般選考は28.0%)
大阪府令和9年度採用の志願者5,566人のうち2,781人(約半数)が第1次選考免除。内訳の最大は常勤講師等経験者1,738人。この区分の令和8年度実績は志願2,100→合格702(2.6倍)
奈良県令和9年度採用は出願1,617人のうち729人(45.1%)が1次免除で二次に進みました。小学校は560人中350人(62.5%)
愛知県令和8年度採用の元教諭・講師経験者特別選考は二次受験370人→合格136人(約37%)。市町村教育長推薦特別選考(一次全免除)は令和7年度採用で237人→180人(約76%)
岡山県令和9年度採用で、前年度に二次の受験資格を得て講師を続けている人(特別選考C①)が160人、全員が第1次試験免除
北海道・札幌市令和8年度採用で北海道の登録者1,136人のうち257人(約23%)が特別選考。札幌市は登録343人のうち特別選考の登録者を合算すると273人——登録者のおよそ8割(私が合算)

※出典:各教育委員会の公表資料(兵庫「選考試験の結果」、広島「選考試験の結果について」、群馬「合格者状況」、埼玉「令和8年度選考試験結果」、大阪「総合結果表」、奈良「1次試験の結果」、愛知「結果について」、岡山「出願状況」、北海道・札幌市「実施要領」)。割合は私が算出。「過年度卒」には講師のほか、民間勤務・大学院在学などの方を含みます。

数字を並べると、見えてくることがあります。講師を続けながら受け直して受かる人は、人数で見ればとても多いということです。兵庫県は合格者の6割以上が過年度卒、群馬県は合格者の7割以上が特別選考ルートでした。「働きながらだから不利」ではありません。ただ、ここで一つ、はっきり言っておきたいことがあります。講師をすれば受かる、講師でなければ受からない、どちらも言い切れません。面接官が見ているのは、その人の経歴に対する「期待値」を超えてくるかどうかです。教員経験のない社会人の方が「現場を知らないのに、ここまで考えているのか。」と期待を超えることもあれば、講師の方が「現場にいるのに、その答えなのか。」と期待を下回ることもあります。講師経験は、面接で語れる材料が増えるという意味で有利ですが、それだけで評価が決まるわけではありません。年齢も同じです。20代だから受かる、50代だから落ちる、とは一概に言えません。年齢ごとに面接官が期待するものが変わるだけで、その期待にどう応えたかが見られています。民間で働きながら、大学院で学びながら合格する人もいます。進路は、自分の生活と準備時間に合うものを選んでくださいね。

講師を選ぶなら、強みは3つあると私は考えています。「クオリティ」「信用」「フレッシュさ」。現場で課題意識を持って授業や生徒指導をやってきた実践(クオリティ)、実際に働いてきた積み重ね(信用)、そして現実を見ても初心を忘れていないこと(フレッシュさ)。この3つが面接で伝わる講師は強いです。裏を返すと、現場にいながらこの3つが語れないと、「講師なのに」という目で見られます。講師という肩書きではなく、そこで何を考え、何を変えたかが評価の対象です。

そして「実績」は、賞や研究発表のような大それたものでなくて構いません。4月にはこうだった子が、こう関わったらこう変わった。その実体験こそが、講師にしか語れない実績です。

2|私立学校の教員として働く

メリットデメリット
授業・生徒対応・保護者対応・分掌など、教員としてのスキルを高める経験ができる忙しくて筆記試験の学習時間を確保しにくい
その学校と相性が良ければ、そのまま勤務し続ける道も選べる学校経営の影響を受けやすい(人員・給与のカット等のリスク)

私立は公立と児童生徒の特徴が少し違う、というのは多くの受講生から聞いてきました。それでも、授業・生徒対応・保護者対応・分掌でスキルアップした経験は軽視できず、面接でのアドバンテージになります。私立で働いたから教採に不利、ということはありません。私立で勤めながら、公立の採用2名という狭き門を合格された受講生もいます。

私立学校の採用試験も、対策の根本は公立の教採と同じです。自己分析を綿密にして、その学校をよくリサーチし、あなたとその学校のマッチポイントを見つけて志望動機・自己PR・イメージ戦略を練っていく。そして案外見落とされがちなのが、私立の採用試験を受けること自体が、来年の教採の練習になるということ。本番の場数を踏めるのも大きいです。1〜3月に募集をかける学校もありますから、根気強く調べてみてください。

3|塾講師として働く

メリットデメリット
「教える力」をとことん高められる(分かりやすい説明・教材研究)学級経営の力は伸ばしにくい
相性が良ければ、そのまま塾講師の道を極めることもできる「数字(成績)」を第一優先しなければならない場面がある

塾は「子どもの成績を伸ばす」ことが求められる環境なので、教える力は本当に伸ばせます。いっぽうで、いま学校で求められている「主体的・対話的で深い学び」につながる授業実践は、やりにくいかもしれません。でも、これも工夫できます。「この単元、学校で授業するならどう組み立てるかな?」と考えながら働けば、塾講師をしながらでも学校現場で生きる経験を積めます。その時間をどう過ごすか次第です。

塾に限らず、教育系の民間企業に勤めていた方で中学校社会科に合格された受講生もいらっしゃいました。その人なりの目的意識を持って教育の仕事に携わっていれば、どんな環境でも学びはあると私は思っています。むしろその経験から「公立校の教諭になりたい」という思いが強くなったり、その思いをより明確に言語化できるようになったりします。

4|大学院に進学する

メリットデメリット
社会に出るまでに、あと2回教採受験のチャンスがある学費がかかる
学生として教採対策の学習時間を確保しやすい現場経験を踏まえた研究テーマにはならない
教科の専門性をより高められる(特に中高志望の方)—

大学院1回生と2回生で、あと2回受験できます。しかも多くの自治体に「大学院進学・在学を理由とする採用の猶予(名簿登載猶予)」の制度があります(愛媛県は1〜2年、福島県は最大2年、新潟県は「大学院進学者名簿」に登載され最少修了年限の年に出願すれば検査なしで採用候補者名簿に登載。栃木県・埼玉県・東京都・茨城県などにも同様の特例あり)。さらに、教職大学院の修了(見込)者を対象にした特別選考を持つ自治体も多く、愛知県・北海道・福岡県などは第1次試験が全て免除です。「対策時間が2年増える」だけでなく、入口そのものが変わることがあるということです(要件は自治体ごとに違うので要項で確認してください)。

出願は、第三次募集で1月頃まで受け付けている大学院もあります(定員が満たされた場合は実施されないこともあります)。諦めずに情報収集してみてください。実際に、大学4回生で不合格、大学院1回生で3自治体に合格して猶予期間に入っている受講生もいます。

5|民間企業に就職する

メリットデメリット
教員以外の職業を経験し、視野を広げられるしっかり自己分析しないと、就職してから後悔することがある
教員以外の道が拓ける可能性もある求人を調べることに時間と労力がかかる

学校で目の前にする児童生徒は、そのほとんどが将来、教育公務員以外の道に進みます。民間企業での経験は、子どもたちの進路を語るときの現実味そのものになります。来年また教採を受けるとしても、採用メリットの1つとして提示できます。

民間に出ることは、教採をあきらめることではありません。免除や特別選考の枠は、講師経験者だけのものではないからです。たとえば神奈川県の社会人経験者特別選考は、令和9年度採用で受験283人→第1次合格207人(通過率73.1%・私が算出)、筆記は一般教養・教職専門が免除でした(神奈川県教育委員会「令和8年度実施 第1次試験 実施状況詳細」「同 合格状況詳細」)。社会人経験者向けの選考を設けている自治体は多いので、数年働いてから受け直す道は制度として用意されています。自分の経歴に合う区分が受験先にあるかは、必ず要項で確かめてください。

それに、「本当に学校で自分がやっていけるのか」「本当にしたいのは先生なのか」という迷いがある方にとっては、就活の過程そのものが自分と向き合う時間になります。私の受講生にも、教採は何度か不合格だったけれど就活では無敗だった方がいます。しかも内定先の雇用条件が、その方のワークライフバランスや希望の業務内容にぴったりだったそうです。

ただ、安易に決めてしまうと後悔することになります。転職自体が悪いのではなく、しっかり自己分析をせずに就職してしまうことで、後々後悔することがあります。

就活・転職を成功させる2つのポイント

ここは、実際に転職活動に成功した受講生が教えてくれたことです。

  • 転職エージェントは複数登録する。理由は3つ。①どの会社かより「どんな担当者がつくか」に左右される一面があるので、リスクヘッジになる ②エージェントごとに持っている求人の特性が違う(高収入・非公開求人・特定分野に強いなど) ③複数使っていると伝えることで、エージェント同士が競合してより良い求人を探してくれる
  • 心から望む業務内容・職場・ワークライフバランスを明確にしておく。ここが不明確だから「なんとなく」進路を選んで後悔したり、エージェントに漠然とした希望しか言えず、最適な職場を探してもらえなかったりします

求人のリサーチを自分一人で全部やろうとすると、本当に時間がかかります。「来年の教採、どうしようかな」と考えている時期に、そこへ時間を割きすぎるのはもったいない。調べる作業は人の力を借りて、あなたは決断と対策に時間を使ってください。

来年に向けて|不合格の敗因を7つに絞ると

「なんでダメだったんだろう」が分からないままだと、来年もゴールの見えない暗闇の中を進むことになります。いい評価のときと悪い評価のときの理由が分からず、安定して合格ラインに近づけません。私が敗因を7つに絞って挙げるとすれば、次のとおりです。

敗因中身と対策
① 見た目の印象表情(内容に合った表情)、話を聞くときのうなずき、座る・立つ姿勢、動作。対策は、面接練習を動画に撮って客観視すること。練習ごとに改善点を1つ決めて、できたかを毎回チェックします
② 話し方声の調子(震え・一本調子・速すぎる/遅すぎる)と、話す順番。面接官には知りたい順番があります。結論→理由→具体例。結論のあとにいきなり具体例を出すと「そもそもなぜそれが大事なのか」が伝わりません
③ 言語化できていない考えてはいるのに、筋道を立てて言えていない。面接官はあなたの考えが間違っていると思っているのではなく、納得できていないだけです。「これぐらいで察してもらえるだろう」を自分基準でやっていませんか
④ 自己理解ができていない「強みは誠実さです」と言いながら、話す具体例は柔軟性の話になる——タイトルと中身の整合性が取れていない人は多いです。子どもへの関わりで「なぜその対応を選んだのか」まで言語化しておくこと
⑤ 実力を「感じさせて」いない実力があるのに表現できていない人が本当に多い。「連立方程式を解けるようになりました」だけでは伝わりません。ビフォー(割り算でつまずいていた)→アフター→そのための手立ての順で示すと落差が伝わります
⑥ 迎合でも押し売りでもなく「マッチ」面接官の正解を探して自分を消すのはNG。「あれもできます」の押し売りもNG。自分がやりたい教育があり、それが自治体の求める人物像と合っている——それを謙虚に示すのがベストです
⑦ 合格マインド「自分なんてダメだ」では努力も続かないし、面接官にも「採用したい」と思ってもらえません。褒められたら「ありがとうございます」と受け取る練習を。人格ではなく行動を評価する言葉づかいを、自分にも他人にも

あわせて、筆記についても正直に書いておきます。一般教養・教職教養は足切り要素の強い試験なので、おおむね7割を超えていないと苦しいのが実際です。そしてもう1つ、極端に低評価の科目が1つあると、それだけで不合格になることがあるのが教採の特徴です。小論文でD評価を取ってしまったら、他が良くても届かない。まずは全科目で最低ラインをクリアし、そのうえでどこで差をつけるかを考えてください。

「自分の何がダメだったのか」を考えすぎないで

敗因の話をしておいてなんですが、いちばんお伝えしたいのはこれです。

教員採用試験は、採用される枠が決まっている相対評価です。だから「自分の何がダメだったのか」を考えるよりも、面接官はどんな人を採用したいと思うのか/これから磨いていくといい自分の武器は何なのか/自分自身の熱い使命感はどこにあるのか——その魅力をどう面接官に見せていくか、という戦略を改めて考えるほうが建設的だと私は思います。そうすることで、強いライバルがいるなかで「あなたを選ぶ理由」が明確になってきます。

もう1つ。心の余裕の話をさせてください。「教採に合格しなかったら後がない」という切迫感は、面接官に「この人はあまり能力がないのかもしれない」と無意識に感じさせてしまうことがあります。逆に「不合格だったら他の道もある」という余裕があると、「この人は何をやっても引く手あまたなんだろうな」と伝わる。「もう不合格でもいいや」と割り切った瞬間に合格する——あのからくりは、ここにあります。

ただし、心の余裕と「教育への熱意がない」ことは別物です。子どもや教育への情熱・愛情は、しっかり表現しないと「本当に先生になりたいの?」と思われます。余裕は持ちながら、思いは伝える。この記事で5つの進路を全部見ていただいたのは、実はその余裕を作るためでもあります。

今年不合格でも、合格はできます

教採対策の指導を通して、不合格で自信をなくしている方をたくさん見てきました。そのうえで、はっきりお伝えします。何回不合格になっても、合格は無理ではありません。

  • 50代で合格された方
  • 16回目の受験で合格された方
  • 倍率11倍・採用1名という枠を突破された方

この仕事を通して、たくさんの「奇跡」と呼ばれるような合格を見てきました。もちろん、そこに辿り着くまでは楽な道のりではなく、みなさん人一倍の努力をされていました。でも「無理」ではないんです。

いっぽうで、「今年はもうこれ以上できないというぐらいやり切った。だから逆に踏ん切りがついて転職活動をしてみた」という方もいます。その結果ご自身の希望にぴったり合う職場に出会えて、「受かってなくて良かった」とおっしゃいました。16回目で合格した方も、この方も、共通点は「やり切っている」ことなんですよね。やり切ったからこそ結果が出たり、清々しく次に行けたりする。中途半端だと「もっと頑張れたのかな」とダラダラ現状維持になってしまいます。

どんな選択も必ず意義があります。あなた自身がその選択を意義あるものにするために、今やるべきことに集中してやり切ってみてください。

講師も教諭も、一緒に働く仲間です

この仕事を始めて初めて知ったのですが、なかなか合格できない講師の先生に対して、正規の先生が「こんなことしてる時間があったら、もっと勉強したら」「いつになったら受かるの」といった言葉をかけてしまうことが、現実にあるそうです。私は自分が正規教員として働いていたとき、講師だから・教諭だからという意識を持ったことが一度もなかったので、それを知ってとても悲しい気持ちになりました。

だから、考えてみてほしいんです。自分だって不合格になる可能性はある。もし自分が不合格になったとき、合格した人から何を言われたら嫌だろう——それを考えておくと、自分が合格したときに選ぶ言葉が変わります。

  • 相手の気持ちに想像力を働かせる——親切心でしたことが、相手にはおせっかいになることもあります
  • 自分にベクトルを向ける——協力と干渉は違います。求められたときに、相手を尊重しながら助け合うのが協力。求められてもいないのに口を出すのは干渉です
  • 無知の知を意識する——分かりやすい実績を出せたとしても、自分がいつも正しいわけではないし、その実績もいろいろな人に助けられて得たものです

そして、いま落ち込んでいるあなたへ。私自身、大学受験で何度も不合格が続いて「自分は本当に合格できないんじゃないか」と思った時期がありました。でも振り返ると、合格できなかったことより、浪人時代に全然頑張れなかったことのほうが、自分を嫌いになる挫折でした。

だからお伝えしたいのは、頑張れない自分を「ダメだ」と責めないでくださいということ。頑張れないことなんて誰にでもあると受け入れたうえで、「今なら頑張れる」というときに自分をしっかり頑張らせてあげる。この塩梅が、けっこう大事なんです。

よくある質問

Q. 二次で落ちました。来年はまた一次から受け直しですか?

A. 自治体によります。福島県・広島県のように「二次を(有効に/全科目)受験した」だけで翌年の一次が免除になる自治体、栃木県・宮城県・山口県・島根県・神奈川県・長崎県のように成績ランクや区分で免除になる自治体、岡山県・愛媛県・香川県・福井県・青森県・滋賀県・富山県・岐阜県のように「その年も講師をしていること」が条件の自治体があります。まず結果通知書を最後まで読んで、それから要項を確認してください。自治体別の一覧はこちらにまとめています。

■ 二次で落ちても翌年は一次免除?自治体まとめ

Q. 講師の仕事の話が来ませんでした。どうすればいいですか?

A. 講師登録をしても必ず仕事が来るとは限らないのが実際です。特に小学校は自治体によって差があります。中学校・高校、特に高校の非常勤は比較的働き口があります。この記事で挙げた他の4つの選択肢(私立・塾・大学院・民間)の情報収集を、並行して進めておいてください。調べておくこと自体が、決断のスピードを上げてくれます。

Q. 民間企業に就職したら、来年の教採で不利になりますか?

A. なりません。むしろ多くの自治体に社会人経験者を対象とした特別選考や加点があります。東京都の特例選考⑥は「民間企業・官公庁・国公私立学校等で通算2年以上の勤務経験(常勤・非常勤を問わない)」が要件で、東京都でもっとも間口の広いルートです。埼玉県のセカンドキャリア特別選考は令和9年度採用から「1つの企業で継続3年以上」でも受けられるようになりました。愛知県の社会人加点は10点です。ただし面接では「社会人経験を学校現場でどう活かしたいか」「なぜ社会人をしていたのに教員を目指すのか」の2つを準備しておくのがおすすめです。

Q. 年齢的にもう厳しいでしょうか?

A. 面接官が気にしているのは年齢そのものではありません。今求められている教育(ICT・主体的で対話的な授業)を謙虚に学べるか、年下の同僚と対等に働けるか、年相応の価値を押しつけがましくなくチームに提供できるか——この3点です。ここが伝われば、豊富な人生経験はそのまま強みになります。実際に50代で合格された方もいらっしゃいます。

Q. 何年も不合格が続いています。もう向いていないのでしょうか?

A. 16回目の受験で合格された方がいます。その方は、それまでは「なんとなくダラダラ受けてきた」とご自身でおっしゃっていました。吹っ切れて臨んだ年に合格されたんです。不合格が続いているのは「向いていない」からではなく、改善の方向性が定まっていないからということもあります。この記事の敗因7つのうち、自分がどれに当てはまるかを1つ決めて、そこだけ変えてみてください。

Q. 合格しそうかどうか、手応えで分かりますか?

A. 手応えと結果は必ずしも一致しません。面接中に面接官に首を傾げられても不合格とは限りませんし、逆もあります。「合格サイン」については別の記事にまとめていますので、そちらもどうぞ。

■ 教員採用試験の合格サインは本当?面接での手応えと結果の関係

この記事は受験者の皆さんの報告で育ちます

今年の面接で何を聞かれたかを記録して報告することは、来年のご自身のためにもなります。書き出す作業そのものが、いちばんの振り返りになるからです。そしてその記録は、同じ自治体を受ける来年の受験生にとって何より貴重な情報になります。ご報告いただいた方には、お礼に「合格発表のあとどうなる?」ガイド(PDF)をお渡ししています。

■ 教採 過去問データベース|受験報告フォーム

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