こんにちは、金井志津乃です!

場面指導って、何が出るか分からないから対策のしようがなくて…。本番でいつもグダグダになってしまいます。

大丈夫です。場面設定はその都度違っても、どんな場面にも共通して押さえるポイントがあります。そこを持っておけば、初めて聞くお題でも落ち着いて対応できますよ。
この記事では、教員採用試験の場面指導について、3つの形式・どんな場面でも効く3つのポイント・形式別のコツを、私が現場でも実際に使ってきた方法にもとづいて解説します。後半では、令和9年度採用で場面指導を課す自治体の一覧と、全国の受験者からいただいた130件の受験報告に含まれる場面指導の設問133件を集計した「よく出る場面」も載せました。
この記事の根拠
- 私自身が教諭時代に実践して難局を乗り越えた方法と、受講生に実践してもらって合格報告を聞いてきた方法
- 令和9年度採用の実施要項68自治体分(47都道府県+大阪府豊能地区+政令市20)から抽出した場面指導の実施状況
- 全国の受験者からいただいた130件の受験報告に含まれる場面指導の設問133件(令和6〜8年度採用と年度不明1件)を分類した「よく出る場面」
- 市販の過去問集5年分(令和4〜8年度採用)で場面指導に分類される1,247件の出題傾向による裏取り
- 場面指導で何を評価されているのか知りたい
- ロールプレイでいつも早く解決策を出そうとして焦ってしまう
- 自分の自治体で場面指導があるのかどうか、はっきりさせたい
- 全国でどんな場面が出ているのか、実物を知りたい
こんな人はぜひ、この記事を最後までご覧ください! 場面指導のコツは、「もう焦らない!場面指導のコツ」動画でも徹底解説しています。この記事と動画をセットで使っていただくのがいちばん効果的です。
場面指導には3つの形式がある
まず、場面指導の形式を押さえておきましょう。場面指導の形式は自治体によって異なりますが、主に次の3つです。
| 形式 | どんな試験か |
|---|---|
| ① 面接質問系 | 集団面接や個人面接で「こういう時どのように対応しますか」と聞かれ、「はい、こういうふうに対応します」と言葉で答える形式。ほとんどの自治体で実施されています |
| ② 個別対応系ロールプレイ | 面接官が子ども役や保護者役をして、受験者が教員役として実際にやり取りをする形式。「場面指導」という試験科目を設けている自治体もあれば、面接質問の途中で「私を生徒だと思ってやってみてください」と突然求められる場合もあります |
| ③ 一斉指導系の実演 | よくない行動や良かった行動について、クラス全体に一斉に指導する形式。「場面指導」という科目名の自治体もあれば、「模擬授業」という科目名で実施している自治体もあります。どちらも実態は同じです |
この記事では、②個別対応系と③一斉指導系のコツを紹介したうえで、最後に①面接質問系のコツを解説します。というのも、具体的な個別対応や一斉指導のポイントを押さえているからこそ、面接質問として問われた場合でも具体像を思い浮かべながら要点を押さえて回答できるからです。逆に言うと、①だけを言葉で丸暗記していると、追質問で崩れます。
私の自治体に場面指導はある?|令和9年度採用の実施状況
令和9年度採用の実施要項を68自治体分(47都道府県+大阪府豊能地区+政令市20)確認して、二次試験で場面指導が課されるかどうかを整理しました。結果は次のとおりです。
| 区分 | 自治体数 |
|---|---|
| 実施(全受験者に課される) | 13 |
| 一部(特定の校種・区分のみ) | 10 |
| 要項に記載なし | 26 |
| 記載が曖昧で判別できず | 19 |
「実施」「一部」と判定した23自治体は次のとおりです。大半は独立した試験科目ではなく、個人面接や模擬授業の中で実施されます。だから要項の科目一覧だけを見て「うちには場面指導がない」と判断するのは早いんですね。
| 自治体 | 区分 | 要項での位置づけ |
|---|---|---|
| 山形県 | 実施 | 独立区分ではなく個人面接2の中で実施。注記に「学校生活全般におけるさまざまな場面での児童生徒や保護者への対応の仕方等について問う」とある |
| 埼玉県 | 実施 | 小・中・養護・栄養の個人面接の中で実施 |
| 兵庫県 | 実施 | 独立区分ではなく個人面接(約25分・180点)の中で「試問を含めて実施する」と明記 |
| 鳥取県 | 実施 | 個人面接の中で実施(独立区分ではない) |
| 島根県 | 実施 | 模擬授業とともに個人面接の中で実施。養護教諭はロールプレイング+場面指導、栄養教諭は場面指導のみ |
| 広島県 | 実施 | 模擬授業面接の中で、学習指導案を作成したうえで「授業若しくは場面指導」を行う |
| 横浜市 | 実施 | 個人面接(約30分)の中で「模擬対応(場面指導)」を2分程度実施。養護教諭は模擬授業に代えて模擬対応 |
| 川崎市 | 実施 | 面接試験が「場面指導・集団討論・個人面接」で構成される。場面指導は大学3年次在籍者推薦を除く全区分 |
| 新潟市 | 実施 | 個人面接に含まれる(児童生徒または保護者等への対応を想定) |
| 大阪市 | 実施 | 「全校種教科の個人面接において、その中で場面指導を行います」と明記 |
| 堺市 | 実施 | 個人面接の中で全受験者に実施。設定された場面についての指導方法を面接員に説明する形式で、ロールプレイ形式ではない |
| 神戸市 | 実施 | 要項の見出しが「個人面接試験概要(模擬授業・場面指導・面接官からの質疑応答等)」 |
| 広島市 | 実施 | 広島県との共同実施。模擬授業面接の中で「授業若しくは場面指導」 |
| 北海道 | 一部 | ALT特別選考のみ(実技検査の英語欄で日本語での場面指導) |
| 宮城県 | 一部 | 中高保健体育の実技試験内で「口頭試問を含む場面指導」として実施 |
| 福島県 | 一部 | 養護教諭受験者のみ(模擬授業に代えて実施) |
| 茨城県 | 一部 | 特別支援学校教諭のみ。独立区分ではなく個人面接の中で実施 |
| 京都府 | 一部 | 「教育実践力テスト」で、養護教諭のみ「場面指導・救急救命」(他校種は模擬授業・口頭試問) |
| 岡山県 | 一部 | 養護教諭区分が模擬授業に代えて「模擬場面指導・口頭試問」 |
| 岡山市 | 一部 | 養護教諭が「模擬場面指導・口頭試問」 |
| 徳島県 | 一部 | 養護教諭および特別支援学校教諭(医療的ケア担当)が模擬授業に代えて実施 |
| 愛媛県 | 一部 | 高等学校・特別支援学校の教職経験者/現職教員特別選考の受験者に第2次で実施(特支=場面指導・配点20点) |
| 大分県 | 一部 | 「模擬授業(場面指導)及び面接Ⅰ」のうち、養護教諭志望者のみ模擬授業に代えて場面指導 |
「うちの自治体は表にない=場面指導は出ない」ではありません
この表は「要項に場面指導という科目・実施内容の記載があるか」で判定したものです。記載がない自治体でも、①面接質問系の場面指導(「こういう時どうしますか」)は個人面接の中でごく普通に問われます。実際、受験者報告でも要項に記載のない自治体から場面指導の報告が届いています。表を見て安心せず、①の準備は全員がしておいてください。
面接官は場面指導で何を見ているのか
自治体の評価の観点の文言をピックアップすると、使命感・堅実性・判断力・愛情・協働性・コミュニケーション能力といったものが挙がってきます。ここで、多くの受験者が持っている誤解をひとつ解いておきたいと思います。
評価項目に「課題解決能力」と書かれている自治体があるために、数分間の場面指導でこの課題を解決まで持ち込まないといけないと思い込んでしまっている人がとても多いんです。でも、考えてみてください。普段の学校の実務なら十数分・何十分・何日もかけて解決策や妥協点を見出していく課題を、たった数分でやりなさいということ自体がそもそも無理難題ですよね。
時間内に課題を解決するに至らなかったとしても、その人の課題への向き合い方・考え方・人柄を見れば、課題を解決する能力は評価できます。実際、面接官は次のように見ています。
| 評価の観点 | どんな姿勢から読み取られるか |
|---|---|
| 使命感・教育的愛情 | どんな思いやスタンスで子どもや保護者に向き合っているか |
| 堅実性 | 学校の一員として学校全体にも視野を広げて、慎重に話を進めていく姿勢 |
| 判断力 | さまざまな情報を収集したうえで、適切な提案や支援をしようとする姿勢 |
| 協働性・コミュニケーション能力 | いろいろな立場の人の思いや利害を汲み取り、それぞれの立場を尊重して寄り添いながら、一緒に解決策・改善策・妥協案を見出そうとする姿勢 |
つまり、「早く正解を出す人」ではなく「誠実に向き合う人」が評価されます。ここが腹落ちすると、本番の焦りが半分くらい消えますよ。
どんな生徒対応でも押さえておくべき3つのポイント
いじめ、不登校、授業崩壊、その他もろもろの子どもの困り感——場面指導の具体的な対応は、その時の状況や子どもの個性、場面設定によって、やっぱりその都度考える必要があります。でも、共通して押さえるポイントはあるんですね。3つに絞ってお話しします。
ポイント① 子どものメンツを守る
いじめ、からかい、授業妨害的な行動——「今すぐ止めるべきだ」という場面はありますよね。その行動を止めるとき、子どもを見せしめ的に叱るのではなく、その子のメンツを守りながら止める。私が現場で子どもたちと関係づくりをするときに、第一に大切にしているのがここです。
生徒対応は、実は日々の関係づくりが土台です。でも、関係ができていない間でも指導しなければいけないタイミングってありますよね。関係ができていない中で指導するときこそ、必ずその子のメンツを守ってあげる。授業中におしゃべりをしている子を注意するときも、その子のメンツを崩さない声かけを日々心がけてください。
ポイント② 事実確認をする
まず止める、というワンステップはもちろん大事です。でもその後、どんな経緯だったのか/本当にその子が中心だったのか/他の子の意見や同席者からの情報はどうか——ここをしっかり確認することを心がけてください。
この事実確認は、子どもに対してだけでなく、保護者に対しても、他の教員に対しても必ず重要になります。事実確認を怠ると、その後の判断も正しくできなくなりますし、保護者や子どもたち、他の教員に対する説明責任も果たせなくなってしまいます。対応すべき出来事が起こったときは、まず事実を全体的に把握する。これが私たちに求められることだと考えています。
ポイント③ 生徒理解(背景の理解+「今後どうしたいか」の理解)
生徒理解は、2パターンに分けて考えています。
- どのような背景でその行動を起こしたのか。その子が抱えているストレス、満たされていない承認欲求、置かれている家庭環境、その子自身の考え方の癖(認知の歪みから他の子と不要にすれ違っていないか)——その子の話を聞きながら、他の子どもたちとどのようにずれているのかを客観的に把握してあげることが大事です。
- 今後どうしていきたいのか。生徒理解はここで止まってはいけません。いじめの被害者から相談を受けたとき、教師が正しい答えを見出さなければいけないと考えている人は多いかもしれませんが、私はまったくそう考えていません。ここでも生徒の気持ちを理解してあげることを重視していました。
教師側が良かれと思ってやったいじめ対応が、実は生徒にとっては「それ、やめてよ」ということもあるわけです。「自分が先生に伝えたせいで発覚した、ということにはしたくない」——子どもなりに恐れていることがある。でも、それをどう持っていきたいか、どういう結末を望んでいるかまでは、子ども自身がまだ考えに至っていないことも多いんですね。
だから私は、「あなたから聞いたんだけど、というふうにするのはやっぱり嫌だよね」「うん、嫌だ」「それだったら、私が普段から休憩時間に見に行っていたから、私が見て気づいたんだけど、というふうに切り出してみるのはどう?」——こんなふうに選択肢を出して選んでもらうようにしていました。その子が「それは微妙だな」と思ったら、また別の案を出す。子ども自身が「先生のそのアイディアはうまくいきそう」と感じるものを採用しないと、やっぱりうまくいかないんです。
「私がこうしてあげる」とこちらが主導で決めるのではなく、「こういう選択肢もあるし、こんなふうにもできるけれど、あなたはどれがいい?」と提案する。その子自身が感覚として一番よく分かっているので、「それはリベンジがあるかもしれないから怖い」といった恐れや不安をできる限り排除した形で、生徒と一緒に解決策を見出していく。これが3つ目のポイントです。
最終的には、皆さんの教育観・教育における軸に応じて、皆さんのキャラに合った具体策を考えることが重要になります。でも、どんなキャラでも、どんな軸を持っていても、この3要素は必要になってきます。詳しくはこちらの動画でどうぞ。
受験者の声
フォーム「情報提供のお願い」に寄せられた一言から、匿名で抜粋しています。
- 「1次試験では集団討論もあり、苦手意識があったので先生のYouTubeを見ながら一から対策を練りました」(香川県・養護教諭・2024年)
- 「面接対策や動画等、大変お世話になりました。一次試験が終わった後の通勤時間は、金井先生のYouTubeを欠かさず見ていました」(熊本県・中学校・2025年)
【形式別】個別対応系ロールプレイの3つのコツ
ここからは形式別のコツです。緊張して頭が真っ白になりそうな本番で、4つ以上のコツを意識するのはなかなか難しいですから、3つに絞ってお話しします。心臓バクバクで焦りそうなときでも、この3つを順に意識して進めていってください。
コツ① 相手のテンポやトーンに合わせる(ペーシング)
ロールプレイが始まるとき、まず第一に意識してほしいのがペーシングです。
| 相手の入り方 | こちらの受け方 |
|---|---|
| 子どもがスローテンポ・低いトーンで「先生、相談があります」 | △「お、どうした? 友達か? 部活か?」(早口・高いトーン) ◎「うん、どうした?」(同じスローテンポ・低いトーンで) |
| 保護者が強めの語調で「先生、ちょっと聞いてくださいよ」 | △「はい、どうしたんですか?」(切迫感がない) ◎「はい、何かありましたか?」(あなたの切迫感を私も感じ取っています、という非言語のメッセージになる) |
ペーシングをすると、相手が安心感を覚えてくれます。人間って、安心感を感じる人を信頼して本音や悩みを打ち明けられるものですから、最初にペーシングをすることで、相手との信頼関係を少しでも構築できるように意識してみてください。相手のテンポやトーンは会話の間にもコロコロ変化していきますので、その変化を感じながら会話することも心がけてみてくださいね。
コツ② とにかく聞く(3つの「何を聞くか」)
多くの人がやってしまいがちなのが、まだ十分に相手の話を聞いていないのに「学校ではこんな様子なので安心してください」と無理やり説得しようとしたり、「今後は学校でもこうしていこうと思います」と解決策をすぐ提案してしまうことです。でも保護者や子どもの立場に立ってみると、もっと話を聞いてほしいと思いませんか。実際の試験でも、面接官から「なぜあの時、生徒の話をもっと聞かなかったんですか」と追及された人がいました。
病院でも同じですよね。ひとこと聞いただけで「では薬を出しておきます」と言われたら不安になる。でも「今まで同じようなことはありましたか」と丁寧に聞いてもらったうえで対処法を提示されるからこそ、納得できるわけです。
では、何を聞けばいいのか。次の3つを意識して聞けば、まずい対応にはなりにくいです。
| 聞くこと | ねらい | 具体的に |
|---|---|---|
| ① 客観的事実を、絵やストーリーが浮かぶまで | 適切な判断をするには情報不足が命取りになる | 時系列・場所・関係性・具体的な発言や行動を、頭でイメージできるまで詳しく。整理しながら「筋の通らない部分」に気づいたら「その時はどんな感じでしたか?」と確認すると、混乱していた相手も自分の状況を俯瞰できて冷静さを取り戻すことがあります |
| ② 気持ちに寄り添いながら | 「何とかしてほしい」の裏に「わかってほしい」がある | 子どもが求めているのは、ひとことで言えば「大切な自分であることを感じさせてほしい」。ネガティブな気持ちも、性格が悪いと思われそうな一面さえもジャッジせずに受け止めてくれる存在を求めています。「こんな大事な話を教えてくれてありがとう」と真っ直ぐ受け取ってあげてください |
| ③ 理想的な未来 | 今後の対策を考えるうえでの目的地になる | 本当は学校に来たいのか来たくないのか。どんな学級なら来られるのか。友達とは今後どんな関係でありたいのか。目的地が分からずに地図を見ても、どっちに進めばいいか分かりません |
保護者対応も同じです。保護者にも「何とかしたい」という思いとともに、「こんなに頑張っている自分を親として認めてほしい」「保護者として自信を持ちたい」という、本人でさえ認めたくないような潜在的な気持ちが隠れています。だからこそ私は、子どもの問題行動についてやり取りするときも「お母さんも、いつもお家のことやお仕事をされている中での子育ては本当に尊敬します」と、責められているような感じがしないように配慮していました。これは口先だけではなく、心からそう思っていたことです。
相手の立場に立って気持ちに寄り添おうという姿勢は、何気ない言葉尻や雰囲気に現れます。それが、教採でも実際の対応でも、使命感・教育的愛情・協調性として伝わっていくわけです。
コツ③ 学校全体に視野を広げて、慎重に判断する
「今からクラス替えできませんか」「先生が通院の送迎をしてくれませんか」といった訴えに対して、「検討します」と即座に言ってはいけません。私が実際に受けたクラス替えの相談でも、できる・できないを先に答えるのではなく、「クラス替えについては私の一言では判断できないのですが、まずはこれまでの詳細について教えていただけないでしょうか」と切り返しました。
判断に迷ったら、つまりそれは情報不足ということです。即決せずに、まずは事実の詳細を把握するために聞くところから入ってください。
もし「前向きに検討します」と言ってしまったことに途中で気づいたら
「すいません、先ほど大丈夫だとお伝えしてしまったのですが、改めて考えると、他のクラスでもこのような恐れがあるのではないかと思いますので、一度管理職や学年主任に確認する時間をいただけますでしょうか。大変申し訳ないです」——こんなふうに誠実にスタンスを改めましょう。私が管理職だったら、そう対応できる受験者を見て「この人ならミスをミスのまま流さず、誠実に対応してくれるから安心だな」と感じます。つまり、最初のミスをむしろチャンスに変えられるんです。
「ノーミスでいなければいけない」と考えて萎縮するのではなく、誰でもミスはあるけれど、ミスに対して誠実に謝罪して、ダメな判断のまま突き進まないことのほうが大事——そう思って肩の力を抜いて臨んでください。
ただし、「判断するのに時間が欲しい」と序盤でスパッと言ってやり取りを終えてしまうのは違います。入りでペーシングをして、時系列や具体的な出来事を整理しながら、気持ちに寄り添ってとにかくよく聞く。そのうえで、できないことはできないと伝える/検討する時間が欲しいと伝える、という順番です。重大な決断について慎重に対応できる受験者を見て、面接官も「この人なら安心して仕事を任せられる」と現実性を感じてくれます。
【形式別】一斉指導系の実演の3つのコツ
「交通マナーが悪いと地域の人からクレームが来たので、クラス全員に話をしなければならない」「卒業式の練習の姿勢が良かったと他の先生からお褒めの言葉をいただいたので、クラス全員に伝える」——こうした一斉指導系のコツも3つです。
コツ① 生徒の気持ちに寄り添う
「自転車で広がって通学したら他の人の迷惑になる、気をつけましょう」——こうストレートに言って行動が改善されるなら、これほど楽なことはありません。でも実際は、子どもたちのよくない行動にも何かしらの言い分や背景があります。
私たち大人も「甘いものをやめて運動したら痩せられるんだからやりなさい」と言われたら「分かっているけどできないんだよね」と思いますよね。子どもも同じです。私も昔は正論ばかり投げかけていましたが、それで行動が改善されたことはあまりありませんでした。子どもの気持ちに寄り添うほうが、行動改善が見られるようになったんです。
だから一斉指導でも、まず子どもの言い分を想定します。「一列やったら友達と全然話できないやん」「一列で前の人が後ろを振り返ってこいでるほうが危ないんじゃん」——リアルに出てきそうな意見を想定して、「確かに、通学するときに友達と話したいという気持ちは先生も分かるなぁ」と気持ち自体は受け止める。そう思ってしまうこと自体に良いも悪いもなく、受け止めるしかありません。
大事なのは、その気持ちがあったとしても正しい行動を選べるように工夫していくこと。信頼関係を築いたうえで、「もし自分たちがすごく急いでいて、前に立ちはだかる自転車がいたらどう思う?」と逆の立場を考えさせたり、怪我をさせたらどうなるかという客観的なリスクを考えさせたり、「一緒に通学する友達とあらかじめどんな話をしておけば広がらずに通学できそうか」と自分たちで解決できる方法を考えさせたりする。ここまで進むと、子どもたちの取り組む姿勢が変わってきます。
これはほめる系の場面指導でも同じです。「態度が素晴らしかった」という外側だけに目を向けるのではなく、「良い式にして先輩を送り出そう」というみんなの気持ちや、自分がどう行動すべきかを自分で考えて律しようとした気持ちにも目を向ける。そうすると、卒業式以外の場面にも子どもたちが応用してくれるようになります。
コツ② Iメッセージで伝える(ただしラベリングに注意)
「あなたは◯◯だ」がYouメッセージ、「私は◯◯だと思いました」がIメッセージ。Iメッセージを使うと、言われた相手が責められているという感情を持ちにくくなります。ただし、同じIメッセージでも使い方には注意が必要です。
| 惜しい言い方 | おすすめの言い方 |
|---|---|
| 「あなたたちが交通マナーの悪い生徒たちだということに、私は残念に思いました」 → 一見Iメッセージですが「交通マナーの悪い生徒だ」という人格のラベリングが伴っています | 「あなたたちの交通マナーが良くなかったということを聞いて、私は残念に思いました」 → 過去の行動のみに言及しているので、「そこは改めないといけないな」と受け入れやすい |
| — | (ネガティブなことを伝えるとき)「みんなの一生懸命頑張っているところや優しいところも私はたくさん見てきたから、交通マナーが良くなかったという点はすごくもったいないと私は思いました」 |
「あなたは嘘つきなんですね」とラベリングされるのは、大人でもきついですよね。人格をラベリングされると、相手のセルフイメージも悪い方で固定化しがちです。子どもにとっては、いつも自分たちを見てくれている大好きな先生に「残念だった」と言われることの影響力は、良い意味でも悪い意味でも大きい。だからこそ、叱ってくれているけれど、ちゃんと自分たちを受け止めてくれていると思えるようにフォローを入れることを忘れないでください。
ほめる系の場面指導でも、Iメッセージはどんどん使っていきましょう。「みんなの思いやりを見て私は感動しました」「◯◯さんが手伝ってくれたおかげで助かった、ありがとう」「自分で自分の行動を律することができたのがかっこよかったと私は思う」——子どもを評価するのではなく、私たちが一人の人として感じたことを真っ直ぐに伝えるイメージです。
そして、この心に訴えかけるメッセージと、「なぜそれが大事か・この行動が望ましい理由は何か」という論理的なメッセージを掛け合わせると、信頼関係を崩さずに納得感を与える指導になります。子どもが自分で自分の行動を律するためには、「だからこうしたほうがいいんだな」と論理的にも納得していることが大事だからです。
コツ③ 自分の言葉で語る
なぜそうすることが大事なのか、なぜダメなのか、みんなにどうなってほしいのか。皆さんなりの考えを真っ直ぐに伝えることで、子どもの心にすっと届く言葉になります。私たちが子どもの頃、先生が口先だけで「言わなきゃ仕方ないから言っている」ことは、すぐに分かりましたよね。今の子どもたちも同じです。
私だったら、交通マナーについてこう語ります
「私は、交通マナーって思いやりだと思っています。自分と他人に対する思いやりです。交通マナーを意識して自分の命を守ることは自分への思いやり、相手の命を守ろうとすることも相手への思いやりだよね。みんなには、先生に怒られるからとか罰金を取られるからとかじゃなくて、自分のことを好きでいられる、自分のかっこいい行動を考えて行動してほしいなと思います。(中略)誰かが見ている見ていないに関わらず、みんなが自分のことを誇れるかっこいいやり方を考えて行動してくれたら嬉しいです」
これはあくまで私なりの考えです。私とはまったく違う切り口で語る先生の話を聞きながら「十人十色で面白いな」と思っていましたし、子どもたちに響いているのはその先生なりの言葉で真剣に伝えている言葉だったなと思います。「どう話すのが正解なのかな」「高得点が取れるのかな」と思考を狭めるのではなく、自分だったらどう語るかなを考えながら練習してみてください。
ただし、自分の言葉で語るときも「◯◯という人が多いけど私は違うと思う」のように誰かの考えを否定・批判する内容は避けましょう。皆さんが否定したスタンスを面接官が持っていた場合、一気に評価が下がる可能性が高いです。
私自身、面接官視点でたくさんの場面指導や面接練習を見てきましたが、「この人の言葉ではなさそうだな」「こう言ったほうが良さそうだから言っている感じかな」と感じる回答からは、教育者としての深みや教育的愛情、使命感を感じにくいと思っています。実際に面接官を経験された方たちと話しても、ほとんどの人が「もっと自分の言葉で語ってほしい」とおっしゃっていました。
教職経験があるとかないとかは関係ありません。教員として必要な誠実性や堅実性、教育的愛情、向上心や努力できる力、異なる立場に立ってみようとしたり先を見通したりする想像力、心身の健康があれば、実際に現場に出ても試行錯誤しながらやっていけます。
【形式別】面接質問系の場面指導のコツはこれ1つ
面接質問系は、ここまで見てきた個別対応・一斉指導のコツがそのまま生きてきます。実践することを「こんな対応をします」と言葉で説明する形式になっているだけだからです。そのうえで、面接質問系だからこそのコツを1つだけ挙げるなら——具体像を持って話すことです。
ロールプレイや実演は、それ自体が具体的ですよね。でも面接回答では具体像を「示す」ことができません。具体的なイメージが湧きにくいと、面接官は実現可能性を感じにくくなり、それは説得力を感じにくいということにつながります。
| 質問例:保護者から「体育の授業で怪我をして毎日通院しないといけないので、病院までの送迎をしてほしい」と電話がありました。どう対応しますか? | — |
|---|---|
| 惜しい回答 | 「まずは保護者の話をよく聞きます。それから、病院への送迎はできないということを伝えます」 |
| おすすめの回答 | 「まずは保護者のお仕事のご都合や、そう考えるに至った経緯などについて、保護者の気持ちに寄り添いながら丁寧に聞いていきたいと思います。そのうえで、病院への送迎はできない旨を丁寧にお伝えしつつ、何か代案はないか保護者と一緒に考える姿勢も持って対応していきたいと思います」 |
保護者から何を聞くのか/できないことをどんなふうに伝えるのかを簡潔に要点を押さえて表現するだけで、「この人はこんなふうに保護者と関わるんだな」「寄り添いながらも、言うべきことははっきり言える人なんだな」と、その場の雰囲気も含めて指導力・対応力が伝わります。
なお、ペーシングはリアルな実践でこそ伝わるスキルなので、面接回答で「ペーシングをします」とあえて言う必要はないかなと思います。何を大事に、どんな意図で、どのように子どもの成長につなげるのか——それを踏まえて言語化していきましょう。

「じゃあ、どんな場面を練習しておけばいいの?」という方へ。メルマガ&LINEの無料特典で【全国版】場面指導テーマ集を配布しています。こちらから受け取ってくださいね!
【資料編】全国の受験者報告から見る「よく出る場面」
ここからは資料編です。全国の受験者からいただいた130件の受験報告から抽出した場面指導の設問133件(令和6年度採用60件・令和7年度採用51件・令和8年度採用21件・年度不明1件)を、設問の主たる場面で1件ずつ分類しました。
| よく出る場面 | 件数 | 実際に出た問われ方(受験者報告より・校種のみ表示) |
|---|---|---|
| ① 学習意欲・授業規律 | 29 | 「最近のクラスでは、授業のやる気がない状況が見受けられる。クラス全体へどのように指導しますか」(愛知県・中学社会)/「ペアワークをやる度に『一人がいい』と言い出す生徒が数人いる。これについて指導しなさい」(島根県・中学社会)/「授業中、内職をしている生徒を注意したが、塾のテストが近いためと本人は言っている」(栃木県・中学校) |
| ② 行事・学級づくり・ほめる場面 | 25 | 「合唱コンクールの練習に励んでいたクラスが、惜しくも銀賞という結果になりました。クラスになんと声をかけますか(2分間)」(茨城県・中学音楽)/「大縄跳び大会で優勝するという目標を立てて、練習を始めようとしている生徒たちに言葉をかけてください」(愛知県・高校国語)/「学級開きの挨拶だと仮定して話してください」(栃木県・中学社会) |
| ③ 保護者対応(要望・クレーム) | 15 | 「ある生徒の父親が数学の教科担任を変えて欲しいと来校しています。担任として対応してください」(秋田県・高校)/「運動会の練習で熱中症で倒れてしまった。『なんでこんなに暑いのに練習をさせたんだ』と保護者から連絡があった」(栃木県・小学校)/「できない子にばかり声をかけてうちの子にはかまってくれない、と保護者から電話があった場合どう対応するか」(岡山県・高校数学) |
| ④ 健康・安全・特別支援での配慮 | 12 | 「若者の市販薬の依存がニュースとなっている。全校児童生徒に市販薬の依存について指導してください」(愛知県・養護教諭)/「小学部4年生の児童たちに、スクールバスでシートベルトをつける大切さを教えてください」(茨城県・特別支援) |
| ⑤ 服務・情報モラル | 12 | 「生徒が教員とLINEでやり取りしていたらどうする?」(神奈川県・高校)/「クラスの一部がSNSで繋がっている。全体へどのように話しますか」(愛知県・高校)/「別のクラスのBさんが担任の先生に大きな声で怒鳴られている、首もつかまれているところを見た。あれは体罰ではないかと保護者に言われたらどうしますか」(徳島県・特別支援) |
| ⑥ 不登校・気になる様子の子への声かけ | 11 | 「朝、保健室の前で立ちすくんでいる生徒がいる。どう対応するか」(横浜市・中学数学)/「夏休み明けから登校しぶりが見られる。管理職とともに家庭訪問を行ったが、明確な理由は不明である」(富山県・中高社会)/「元気、意欲がなく、机に伏せていることが多い児童への声かけ」(沖縄県・小学校) |
| ⑦ いじめ・友人関係のトラブル | 9 | 「掃除の時間にAさんの机だけが、後ろに下げられずに残っていました。あなたはどうしますか」(横浜市・小学校)/「部活で失敗した生徒が先輩から陰口を言われ、辞めたいと言っている」(群馬県・高校地歴) |
| ⑧ 進路・将来の夢 | 7 | 「将来の夢がないという子どもに、学級担任としてどのように指導しますか」(愛知県・小学校)/「高校なんて、行けさえすればどこでもいいと言っている生徒がいる。その言葉を受け、全体に対し指導をする」(島根県・中学社会) |
| ⑨ 場面の記録がない報告(形式のみ) | 13 | — |
この表から見えること
- いちばん多いのは「学習意欲・授業規律」(29件)。いじめや不登校のような重い場面を身構えて練習する人が多いのですが、実際にいちばん出るのは日常のクラスの空気に関する場面です。
- 2番目に多い「行事・学級づくり・ほめる場面」(25件)は見落としがちなゾーン。ほめる・価値を語る一斉指導(合唱コンクールで銀賞だった、話し合いが活発になった、学級開き)は、叱る場面と同じくらい出ています。
- 保護者対応は形式を問わず定番です。市販の過去問集5年分(令和4〜8年度採用)で場面指導に分類される設問1,247件のうち、保護者が登場する設問は206件。受験者報告でも15件で、どちらでも上位に入ります。
- 公刊の過去問で場面指導の掲載が多いのは東京都・名古屋市・埼玉県・茨城県・兵庫県の順。要項に「場面指導」の科目名がない自治体も含まれます=面接質問系として個人面接の中で問われているということです。
場面指導は「終わったあと」も試験です
受験者報告を読んでいて印象的なのが、場面指導のあとに必ずと言っていいほど追質問があることです。実際に報告されている追質問には、こんなものがあります。
- 今の指導が、どれくらいの児童に届いたと思いますか(愛知県・小学校)
- 伝わらなかった子たちには、どう指導しますか(愛知県・養護教諭)
- 一番伝えたかったことは何ですか(愛知県・小学校)
- どの点に留意しましたか/場面設定(中学2年)の根拠は何ですか(島根県・中学社会)
- 言い足りなかったことはありますか(茨城県・小学校)
- (一斉指導の途中で児童役が)「意見を言ってない児童がいるよ」(茨城県・小学校)
つまり、「うまく演じられたか」ではなく「何を意図してその言葉を選んだか」を説明できるかが問われているんですね。練習のときから「今の指導で一番伝えたかったことは何?」「届かなかった子にはどうする?」と自分に問いかけるクセをつけておくと、追質問が怖くなくなります。
頻出テーマの考え方① 学習意欲が低い生徒への指導
いちばん出題が多い「学習意欲」を例に、考え方の組み立て方を見ておきましょう。ポイントは、いきなり手立てを答えないことです。
まず「学習意欲が低い背景」を3つに整理する
| 背景 | 中身 |
|---|---|
| ① 教科への苦手意識 | 特に中学・高校になると、これまでの経験から「この教科は無理」という苦手意識を持ってしまっているパターン |
| ② 授業が面白くない | ひとことで「面白くない」と言っても、何をしているのか分からない/逆に簡単すぎる/集中できないなど理由はさまざま |
| ③ 純粋に無気力 | 家庭事情(親からのプレッシャー、きょうだいとの比較、親自身が子どもを否定してしまっている)/友人関係・部活の人間関係の悩みで頭が占拠されている/勉強する意味・目的意識がない——など |
「学習意欲が乏しい」とひとことで言っても、本当にいろんな背景が隠れています。だから私たち教師は、まずこの子がどこでつまずいて、今、勉強どころじゃない状況になってしまっているのかを見極めることが大切です。面接で漠然としたテーマを聞かれたときも、「こういう背景の子にはこういう対応をします」と整理して答えるといいですよ。
私が必ず最初に答えるのは「関係づくり」
もし私が面接でこの質問をされたら、必ず最初に答えるのは生徒との関係づくりです。子どもの目や耳、心をこちらに向けさせることからが授業の始まりだと考えているからです。関係ができていなかったら、どれだけ内容のいい授業をしても、やっていないことと同じだと私は考えています。関係づくりで大切にしていることは3つあります。
- どんな子でも力はある、という体で関わる。「どんな子もこのレベルまで来れる」という意味ではなく、どんな子どもも自分がやろうと思ったときには成長する能力があるということ。伸び方は一人一人違うので、その子の一つ一つの成長を見逃さない視点が大切です。「この先生はどうせ自分ができないと思っているな」「この先生は自分のことを信じてくれているな」——子どもたちはしっかり感じ取ります。
- 「何がその子をそうさせているのか」という視点を持つ。「ちゃんとやりなさい」「そんなんじゃまた単位落とすよ」は、その子の人格にレッテルを貼る声かけになりがちです。「いつもダルそうにしてるね」ではなく「今日はダルそうやけど、どうした? 何かあった?」。そう声をかけると、否定された気持ちではなく「今の自分をそのまま捉えて関心を寄せてくれる」と感じて、子どもは心を開いてくれます。
- 共感と承認。「まとめることに意味を感じません」と言った生徒に、私は「確かに、まとめることは勉強することの目的じゃないもんね」と話しました。よく聞くと受験の方向性がまだ決まっていなくてモチベーションが上がりにくいとのことだったので、そこにも共感し、「この学び方だったら有意義だなと感じられるようなやり方でいいから、自分の好きなようにしたらいいよ」と声をかけました。数分後、その子はまとめてくれていました。
学校の先生は、つい正論をポンと言ってしまいがちです。でも、子どもがせっかく心を開いて話してくれたことに「そうだよね」と承認・共感しながら聞く。教師だからと上から目線で関わるのではなく、子どもの目線に寄り添って対等な関係で接していると、「この人の話だったら聞こうかな」「先生の授業だからちゃんと受けるわ」と言い始めるんですよね。
そのうえで「授業の手立て」を語る
関係づくりを語ったうえで、具体的な手立てを添えると回答に厚みが出ます。私が挙げるのは次のようなものです。
| 手立て | ねらい |
|---|---|
| 作業を入れる | 能動的な学びになるだけでなく、机間巡視の時間ができて気になる子にピンポイントで当たれる。関係づくりの時間を授業の中に作れます |
| 視聴覚教材を使う | 語彙が少ない子は、言葉だけの説明では分からない。目や耳から入ると「一瞬で分かった」となります |
| 説明力を磨く | イメージしやすいたとえを入れる/原因と結果の論理を通す/5歳児でも分かる言葉で説明する。難しい語彙が分かった達成感が「分かりやすい授業だ」という実感につながります |
| 学び合いの授業 | 得意な子は教えたり問題を作り合ったりして退屈しない。分からない子は友達の言葉のほうが響くことが多い |
| 授業の中でも承認する | 勉強の結果だけでなく、姿勢や努力への承認を。前より成長したところを見逃さず、すかさず声をかける |
| 環境を整える | 集中できない環境では理解も進みません。前の黒板のまわりに掲示物を貼りすぎない、など |
頻出テーマの考え方②【コラム】多様性に関わる場面をどう考えるか
「クラスにLGBTの生徒がいたらどう対応しますか」——こうした多様性に関わる質問も出ます。ここからはコラムとして、私なりの見解をお話しします。
先にお断りしておきます。ここでお話しすることはこれが正解だという話ではありません。答えのない問題ですので、皆さん自身が「自分のクラスにその子がいたらどう対応するか」を考えるための叩き台にしていただければと思います。
私のクラスに、スラックスの制服を履いてくる女の子がいました。ある生徒に「なんであの子だけズボンなの?」とチラッと聞かれたとき、私はこう答えました。「めっちゃいいよね。私の時代もあんなのがあったら、私も履きたかったなぁ」。実際に自分が高校生だったときに「あんな制服があったら履いてたわ」と思ったので、そう答えました。仮に自分がそう思っていなかったとしても、「いいよね、似合ってるよね」「あの子らしくて私は好きだな」といった回答をしていたと思います。
この対応をした理由は2つあります。
- 女らしさや男らしさよりも、その子らしさ・自分らしさを大切にしてほしかったから。「多様性が認められる」とはそもそも何かと考えたときに、みんなの違いに優劣や正しい・間違っているといったものはないんだ、という価値観だと私は捉えています。「女の子なのに」「男の子なのに」という言葉には、「普通はこうだよね」という固定観念が隠れていることがほとんどで、そこから外れた子を集団から弾いてしまう危険性をはらんでいます。だから私は、その言葉自体を使いたくなかったんですね。
- その生徒の立場に立って考えたときに、それが一番妥当だと判断したから。その子が求めていたのは「いちいち周りに注目されないこと」「他の人の視線を気にせず、普通に居心地よく過ごせる環境」だと考えました。逆に避けたいのは「もの珍しいものとして扱われること・取り沙汰されること」でしょう。だからわざわざ説明するのではなく、どういうものを好むかは人それぞれだよね、という前提の上に話を進めようと考えました。
実際、最初は少しもの珍しそうな視線があったかもしれませんが、次第にそれもなくなり、その子は3年間楽しく学校に通ってくれました。もし何らかの働きかけが必要だと感じたら、ロングホームルームなどで「みんな好きなものは違う」「認め合うほうがお互いに居心地が良い」と考えさせる授業をしたと思います。その場合は、事前にその子に打ち明けて、その子自身が「その授業ならやってほしい」と思える授業を一緒に作るのもありだと考えています。
私の肌感覚では、子どもたちの「普通、女の子だったらこうだよね」は私たち大人の鏡であることがほとんどです。だからこそ、私たち教員が一人一人の違いに優劣をつけたり否定したりせず、自分らしさを認めていれば、認められている集団は居心地がいいという空気が生まれ、子どもたちも自ずとそれぞれの個性を認められるようになるのではないかと考えています。
そして、この話でいちばん感じてほしいのは完璧な回答を答えることが面接で大事なわけではないということです。本当に子どものことを思ってどうするかを考えたことであれば、深く突っ込まれても自分なりに回答できますし、たとえ言葉に詰まったとしても、「この人は本当に子どもたちのためにこういう姿勢で考えていくんだな」「この先生なら、子どもたちとコミュニケーションを取りながらその時の最適解を見出してくれるな」と伝わります。教育現場で正解は一つじゃないことは、教育者である面接官が一番よく分かっていますから。
自治体別の場面指導|実録つきの記事はこちら
場面指導は、形式も持ち時間も、面接官が子ども役をするかどうかも自治体でまったく違います。受験者報告がまとまって届いている自治体については実録つきの自治体別記事を用意していますので、受験先があればあわせてどうぞ。
- 東京都の場面指導|個人面接の中で問われるタイプ。保護者・地域からの申し出への対応が目立ちます
- 埼玉県の場面指導|小・中・養護・栄養の個人面接の中で実施。「◯分以内で実践しなさい」と時間指定される報告が届いています
- 群馬県の場面指導|生徒の性格や部活動まで細かく設定されたロールプレイの報告が多い自治体です
- 茨城県の場面指導|一斉指導系の報告が多く、指導の途中で児童役の面接官が発言してくるのが特徴です
- 横浜市の場面指導|個人面接の中の「模擬対応」。短時間で、目の前の場面にどう入るかが問われます
場面指導の練習のしかた
最後に、本番までの準備の進め方です。むずかしいノウハウはありません。簡潔に言ってしまえば——
- まずペーシングをしながら相手の話をよく聞き、学校全体への影響にも思いを馳せながら、子どもや保護者と対話していく(個別対応系)
- 子どもの気持ちに寄り添いながら、Iメッセージを使って、自分の言葉で伝えていく(一斉指導系)
- それを具体像を持って言語化する(面接質問系)
この3つです。そのうえで、いろんな場面について「自分だったらどう対応するか・どう語るか」を具体的に考えてノートにまとめる作業をしていってください。頭の中でグルグル考えるのではなく、書き出して構造化するのがポイントです。ノートの作り方はこちらの動画で解説しています。
そして、この記事のような動画や記事を通して学んで知ったことを実際に行動に起こす人は25%、継続する人は5%、何もしない人が70%だと言われています。試験本番までは「もうこれ以上できない」というくらい、普段子どもや保護者と接するときに実践してみたり、ノートにまとめたり、イメージトレーニングをしたりして、本番は「これだけやったんだから何でも来い」と肩の力を抜いていけるようにやり切ってみてください。
よくある質問
Q. 数分で解決まで持っていけないと減点ですか?
A. いいえ。普段の実務で何日もかけて妥協点を見出していく課題を、数分でやりなさいということ自体が無理難題です。面接官はその人の課題への向き合い方・考え方・人柄を見て、課題を解決する能力を評価しています。「早く解決策を出さないといけない」と焦るのではなく、どっしり構えてまずは落ち着いて聞くことに徹してください。
Q. ロールプレイの途中で「まずい対応をした」と気づいたら?
A. そのまま突き進まず、誠実にスタンスを改めましょう。「すいません、先ほど大丈夫だとお伝えしてしまったのですが、改めて考えると◯◯という恐れがあると思いますので、一度管理職や学年主任に確認する時間をいただけますでしょうか」——このリカバリーができる人は、ミスをミスのまま流さず誠実に対応してくれる人として、むしろ評価が上がります。
Q. 現場経験がないと不利ですか?
A. 教職経験があるとかないとかは関係ありません。誠実性・堅実性・教育的愛情・向上心・努力できる力・異なる立場に立ってみようとする想像力・心身の健康があれば、現場に出ても試行錯誤しながらやっていけます。面接官は「この人なら対人関係で大きく誤った判断はしないだろう」と信頼できるかどうかを見ています。そのために勉強して努力し続けている人だからこそ、経験の少なさは問題になりません。
Q. 「模擬授業」という科目名なのに場面指導が出ることはありますか?
A. あります。一斉指導系の場面指導は、「場面指導」という科目名の自治体もあれば「模擬授業」という科目名の自治体もあり、どちらも実態は同じです。実際、広島県・広島市は「模擬授業面接」の中で「授業若しくは場面指導」を行うと要項に明記されていますし、養護教諭は模擬授業に代えて場面指導、という自治体(福島県・京都府・岡山県・岡山市・徳島県・大分県など)も少なくありません。科目名ではなく中身で判断してください。
Q. 要項に「場面指導」の記載がなければ、対策しなくていいですか?
A. いいえ。面接質問系の場面指導はほとんどの自治体で実施されています。要項に科目としての記載がない自治体からも、場面指導の受験者報告は届いています。「独立科目としては課されない」と「聞かれない」はまったく別の話ですので、①の準備は全員がしておいてください。
まとめ|気の利いたことを言う試験ではありません
- 場面指導は面接質問系・個別対応ロールプレイ系・一斉指導実演系の3形式。②③のポイントを押さえているからこそ①も答えられる
- 評価されているのは使命感・堅実性・判断力・愛情・協働性・コミュニケーション能力。数分で解決する必要はない
- どんな場面でも共通するのは①子どものメンツを守る ②事実確認 ③生徒理解(背景+今後どうしたいか)
- 個別対応はペーシング→とにかく聞く(客観的事実・気持ち・理想的な未来)→学校全体に視野を広げて慎重に判断
- 一斉指導は気持ちに寄り添う→Iメッセージ(ラベリングはしない)→自分の言葉で語る
- いちばん出るのは学習意欲・授業規律と行事・学級づくり・ほめる場面。重い場面ばかり練習しない
めちゃめちゃ気の利いたことを言わなければならない、という試験ではありません。教採でも実際の現場でも一番大事なのは、私たち教員の評価や名誉を上げることではなく、子どもの成長のために誠実に真っ直ぐに子どもと向き合い、成長していく姿勢です。皆さんが今それぞれに置かれた環境の中で、自分の言葉で勝負して合格を勝ち取れるように——応援しています!
あなたの場面指導の報告が、この記事を育てます
この記事の資料編は、全国の受験者の皆さんからいただいた報告だけでできています。受験された方は、出されたお題・持ち時間・面接官の役・追質問を教えていただけると、来年この記事を読む誰かを救えます。受験報告フォームから、どうか教えてください。
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