こんにちは、金井志津乃です!

熊本県の小論文対策をしたいんですが、テーマ集を探しても熊本県だけ載っていなくて……。そもそも小論文ってあるんでしょうか?

いい質問です。結論から言うと、熊本県に「あなたの目指す教師像を述べよ」のような一般的な小論文(教育論文)はありません。その代わりに二次で課されるのが、専門教科等の「論述」(配点は標準で60点。校種・教科により異なります)。中身がまったく違うので、対策も変えないといけません。
この記事では、熊本県公立学校教員採用選考考査 第二次考査の「専門教科等(筆記又は論述)」について、実際に受考された方から届いた出題と、得点を取り切るための書き方をまとめます。
この記事の根拠
- 令和9年度採用(2026年夏実施)の受験者報告1件を追加収録
- 令和6年度〜8年度採用(2023〜2025年夏実施)の受験者報告6件から、実際に出題された論述を収録
- 形式・配点・基準点は令和9年度採用の実施要項(令和8年4月6日公表)と照合済み
- 市販の全国版小論文過去問集を5年分調べましたが、熊本県分の収録は0件。ただし、過去問集に収録がないことだけで、試験内容が存在しないとは判断できません。
- 熊本市は熊本県とは完全に別実施で、熊本市の二次には「論文(40点)」があります。この記事は熊本県のものです。
- 執筆:金井志津乃(高校地歴の教員採用試験に新卒合格・高校教員として6年半勤務・教採スクール「教員の学校」運営・YouTubeチャンネル登録者1.7万人・大学講演・教採専門誌「教員養成セミナー」への執筆経験)
この記事は各自治体の実施要項等をもとに記載しています。ただし、日程や制度の変更、こちらの見落としがないとは言い切れません。最後は必ず、各自治体の実施要項をご自身でご確認ください。
熊本県に「小論文」はありません|あるのは専門教科等の論述
まず、実施要項の記載を確認しましょう。第二次考査の1日目(令和9年度採用では7月26日)の内容は、次のように書かれています。
- 中学校教諭等(英語)、高等学校教諭等(英語)受考者……論述、実技考査
- 高等学校教諭等(園芸・畜産・食品製造・農業土木・機械・電気電子・建築・工業土木・工業化学・商業)受考者……筆記
- 上記以外の受考者……論述
ポイントは、配点表でこの「筆記又は論述」が「専門教科等」の欄に置かれていることです。「小論文」「教育論文」という独立した欄はありません。つまり熊本県の論述は、受考する教科・職種の専門的な内容を書かせる考査だということです。
| 実施日 | 第二次考査の1日目(令和9年度採用では7月26日(日))。会場は第二次考査受考者に通知。 |
| 対象 | 全校種・全職種(高等学校の農業・工業・商業系は「論述」ではなく「筆記」) |
| 配点 | 60点(中学校英語・高等学校英語は論述30点+実技30点/高等学校の農業・工業・商業系は筆記100点) |
| 基準点 | 受考者の平均点の5割。ここを下回ると、総合得点が合格圏内でも不合格。 |
| 試験時間・字数 | 実施要項に記載がありません。受験者報告には「A3プリント1枚にまとめる」という記録があります。 |
| 免除される人 | 他県等現職者(一次全免除ルート)は論述・実技が免除/元本県教諭等(一次全免除ルート)は筆記又は論述が免除(詳しくはこちら) |
| 過去問の閲覧 | 熊本県庁行政棟本館1階の情報プラザで、過去5年分の第一次・第二次考査の問題を閲覧可(有料コピーあり・県のFAQより) |

基準点が「平均点の5割」という設計、実はやさしくありません。難しい年は全体の平均が下がるので基準も下がりますが、みんなが書ける問題で自分だけ書けなかった年は一発で沈みます。奇をてらう必要はまったくなくて、「みんなが書けるところを確実に書き切る」のが熊本県の論述対策です。
2026年夏の試験で実際に出た質問です。令和9年度採用の受験者から届いた報告を、追質問(→)までそのまま収録しています。
特別支援学校|論述(報告フォームの「小論文」欄で報告・B4縦用紙1枚・1時間・メモ用紙あり)
- 【論述】自立活動について、次の問いに答えなさい。
- 学習指導要領にある自立活動の「自立」とは、何をさすか。
- 自立活動の内容設定で、考慮することを述べなさい。
- 自立活動を指導する際に大切にしたいことを述べなさい。
- (B4縦用紙1枚・各設問に横線の解答欄あり/1時間/メモ用紙が別に配布された)
出典:私の受験報告フォーム(2026年10月1日時点・この自治体の報告1件)。
校種までの表記とし、個人が特定されうる記述は除いています。
過去の出題|受験者報告から分かった6件
実際に受考された方から届いた出題です。年度・校種ごとに収録します。
令和8年度採用(2025年夏実施)
中学校・音楽(3問構成)
- 『中学校学習指導要領(平成29年告示)第2章 第5節 音楽』の「第2 各学年の目標及び内容(第2学年及び第3学年)2 内容 B鑑賞(1)イの(イ)」において、曲想と音楽の構造や曲の背景との関わりについて理解することとある。
問1 「曲想と音楽の構造や曲の背景との関わり」の音楽の特徴を捉えるためには〔共通事項〕と関わらせた指導が必要であるが、具体的にどのような〔共通事項〕と関わらせることが考えられるか説明しなさい。
問2 「曲想と音楽の構造や曲の背景との関わり」を第1学年の学習内容を踏まえて指導する場合、どのように指導するかを述べなさい。
問3 問1及び問2について、あなたはどのような指導を行いたいと考えるか具体的な方法等に触れながら述べなさい。
令和7年度採用(2024年夏実施)
小学校
- 7つくらいの教科から1つを選択し、学習指導要領の内容を問われた(社会を選択したところ、小学校4年の内容だったとの報告)。
特別支援教育
- 自立活動について、手順・留意事項・実践内容の順番でまとめなさい(A3プリント1枚にまとめる形式)。
令和6年度採用(2023年夏実施)
高等学校 ※同じ年度に2名から報告あり(うち1名は保健体育)
- 生活習慣病の原因と、その予防方法について、またその効果的な学習の仕方について(受験者報告にあるテーマの要旨)。
- 生活習慣病について(受験者報告にあるテーマの要旨)。
栄養教諭
- 調理従事者の健康管理及び調理時の衛生管理について(受験者報告にあるテーマの要旨)。

並べてみると、はっきり見えてきますよね。「教育とは」「あなたの目指す教師像は」という設問が1つもないんです。出ているのは、学習指導要領の内容、自立活動、生活習慣病、調理場の衛生管理。全部、その職に就いたら毎日向き合うことばかりです。
出題の型は3つ|自分の校種の型を見極める
報告のあった6件を整理すると、次の3つの型に分けられます。
| 型 | 内容 | 報告のあった校種 | 準備すること |
|---|---|---|---|
| ①学習指導要領 深掘り型 | 学習指導要領の特定の箇所を示し、その解釈と指導方法を説明させる。小問に分かれていることがある。 | 中学校(音楽)/小学校 | 自分の教科の学習指導要領を、「内容の柱→各学年の内容→指導の工夫」の順で説明できるように |
| ②専門知識+指導法型 | 教科の専門的なテーマを示し、知識と、それをどう教えるかの両方を書かせる | 高等学校(2名。うち1名は保健体育) | 頻出の専門テーマについて、「原因→対策→授業でどう扱うか」の3点セットを用意 |
| ③職務実務型 | その職種の実務そのものについて、手順・留意点・実践を書かせる | 特別支援教育/栄養教諭 | 日々の職務を「手順→留意事項→具体的実践」の順で書き出す練習 |
特に注目したいのが、特別支援教育の「手順、留意事項、実践内容の順番でまとめなさい」という設問です。書く順番まで設問で指定されている——これは熊本県の論述を象徴しています。自由に語らせるのではなく、「求められた要素を、求められた順番で、漏れなく書けるか」を見ているのです。
書き方|「小論文の型」はここまで使えます
専門教科の論述だからといって、小論文の対策が無駄になるわけではありません。文章を書く原則の部分は、そのまま使えます。「構想メモを必ず取る」「字数をしっかり満たす」といった小論文の基本は、私が『小論文完全攻略』の動画でもお伝えしています。以下の手順は、それを土台に私が熊本県の論述(専門教科)向けに組み直したものです。
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 設問の要求に線を引く | 「説明しなさい」「述べなさい」「〜の順番で」など、要求語をすべて丸で囲む | 熊本県は小問に分かれることも、書く順番を指定されることもあります。要求を1つ落とすだけで大きく減点されます。 |
| 2. 構想メモを作る | いきなり書き出さず、要求ごとにキーワードを箇条書きにしてから書く | 「手順」「留意事項」「実践内容」のように設問の言葉をそのまま見出しにしてメモを組むと、書き漏らしがなくなります |
| 3. 設問と学習指導要領の言葉を使う | 設問に出てくる用語(〔共通事項〕、自立活動、曲想 など)をそのまま本文で使う | 言い換えると論点がずれます。学習指導要領の用語は正確に、そのまま。 |
| 4. 答案は8〜9割まで書く | 枠や字数の指定があればその8〜9割を埋める。「A3プリント1枚」なら、余白だらけにしない。 | 基準点は平均点の5割。書いていない部分は絶対に点になりません。 |
| 5. 最後に見直す | 主語述語のねじれ、誤字、段落の切れ目を確認 | 専門用語の漢字ミスは印象を大きく下げます |
「構想メモをどう取るのか」は、実際に書きながら解説した動画が一番分かりやすいと思います。テーマは一般的な小論文ですが、要求を分解して並べる手順はそのまま使えます。
そして、添削を受けて、書き直したものを一度は完成させておくことをおすすめします。添削コメントをもとに書き直した「OKパターン」を体感しておく方がいいと、私は思っています。
校種・職種別の準備リスト
- 小学校:報告では「7つくらいの教科から1つを選択して、学習指導要領の内容を問われた」とのこと。得意教科を1つ決めて各学年の内容と系統を押さえ、保険としてもう1教科用意しておくと安心です。
- 中学校:自分の教科の学習指導要領を、「第1学年で何をして、第2・3学年で何を積み上げるか」の系統で説明できるように。音楽の報告では、まさに「第1学年の学習内容を踏まえて」という要求がありました。
- 高等学校:教科の記載がない高等学校受考者の報告からは「専門知識+授業での扱い方」がセットで問われることが分かります。自分の教科の頻出テーマを10個選び、それぞれ「知識」「指導」の2段構えでメモを作りましょう。
- 特別支援学校(学級):自立活動が出題されています。6区分27項目を軸に、実態把握→目標設定→指導内容の選定→評価の流れを書けるように。
- 養護教諭・栄養教諭:栄養教諭では調理従事者の健康管理と衛生管理が出ています。学校給食衛生管理基準や学校保健安全法にもとづく日常業務を、手順として書き出しておきましょう。
- 中学校英語・高等学校英語:論述30点+実技(英語によるスピーキングテスト)30点の2本立てです。論述だけに時間を割きすぎないよう配分を。
- 高等学校の農業・工業・商業系:「論述」ではなく「筆記」100点。第一次考査がない代わりに、ここが専門の得点源になります。
論述と面接は、地続きです
熊本県の論述対策には、うれしい副作用があります。論述で書いた内容が、そのまま面接と模擬授業で使えるのです。
受験者報告を見ていると、個人面接でも「学習指導要領について教えてください」「学習指導要領を理解していますか」とストレートに聞かれています。過去問集200問の集計でも、授業づくり・教科指導の質問は全国平均の約1.6倍で、20テーマ中トップでした。7月26日の論述 → 7月27〜31日の模擬授業と面接は、同じ知識で戦う一続きの試験だと考えてください。なお令和9年度採用は、令和8年熊本地震の影響で7月29日〜31日分の面接・模擬授業が8月12日〜14日に延期されました(7月26日の論述は延期の対象外)。
■ 熊本県の個人面接|受験者8名の実録と5年分の出題傾向(個人面接2回+模擬授業)
専門的な論述であっても、最後の一文で「熊本県の教員としてどんな子どもを育てたいか」に着地させると、答案に芯が通ります。第4期熊本県教育振興基本計画(令和6年度〜9年度)の基本理念は「自らの可能性を拡げ、未来を切り拓く 熊本の人づくり」。5つの基本目標のうち、自分の教科・職務に近いものを選んで結びつけてみてください。
- 変化の激しい時代に対応した質の高い教育の推進
- 共生社会の実現に向けた教育の充実
- 世界に羽ばたく志ある人材を育てる魅力的な学校づくり
- 活力あふれる熊本の実現に向けた文化・スポーツの振興
- 災害からの復旧・復興及び記憶の伝承、『こどもまんなか』視点での教育施策の推進
ただし、設問の要求を満たすのが最優先です。字数や枠に余裕がないときは、無理に理念を入れず、専門の中身を厚くしてください。
よくある質問
Q. 一般的な小論文の練習は無駄になりますか?
A. まったく無駄になりません。設問の要求を漏れなく拾う、構想メモを作る、指定量の8〜9割を書く、主語述語をそろえる——これらは論述でもそのまま得点に直結します。加えて、小論文の練習で作った「自分の教育観の言葉」は、面接でそのまま使えます。ただし「テーマ集を暗記する」タイプの対策は、熊本県では効きにくいと考えられます。時間は自分の教科の学習指導要領に振り向けてください。
Q. 試験時間と字数はどれくらいですか?
A. 令和9年度採用の実施要項には、論述の試験時間・字数の記載がありません。受験者報告には「A3プリント1枚にまとめる」という記録と、令和9年度採用の特別支援学校で「B4縦用紙1枚・1時間」という記録があります(上の「今年の報告」)。過去の問題は熊本県庁行政棟本館1階の情報プラザで過去5年分閲覧できます(有料コピーあり)ので、県内にお住まいの方はぜひ実物を確認してください。
Q. 論述で基準点を下回るとどうなりますか?
A. 不合格になります。実施要項に「総合得点が合格圏内にあっても、各考査内容において設定された基準を満たさないものが一つでもあった場合には不合格となる」と明記されています。第二次考査の筆記・論述・実技の基準点はそれぞれの平均点の5割です。面接がどれだけ良くても、論述が白紙に近ければそこで終わってしまいます。
Q. 論述が免除される人はいますか?
A. います。「他県等現職者を対象とした第一次考査の全免除及び第二次考査の一部免除」(高等学校教諭等を除く)に該当する方は論述・実技が免除され、個人面接2回を受考し、小学校・中学校では模擬授業も受考します。また「元本県教諭等を対象とした第一次考査の全免除及び第二次考査の一部免除」に該当する方は筆記又は論述が免除されます(個人面接2回は受考。模擬授業は小学校・中学校のみ、実技は該当教科のみ受考)。詳しくは特別選考の記事にまとめました。
■ 熊本県の特別選考と一次免除ルート13種|大学3年生早期・大学等推薦・講師・教職大学院・キャリアチェンジ・加点制度
Q. 熊本市にも同じ論述がありますか?
A. 熊本市は熊本県とは完全に別実施で、二次の構成も違います。熊本市の第二次選考試験は「論文」(免除区分Dを除く)・「実技」(幼稚園・中高の音楽/美術/保健体育のみ)・「模擬授業等」・「個人面接(2回)」からなり、論文は40点という配点です。熊本市を受験される方は、熊本市教育委員会の実施要項をご確認ください。
この記事は受験者の皆さんの報告で育ちます
熊本県の論述は、市販の過去問集にほとんど載っていません。だからこそ、受考された方の報告がそのまま次の方の教材になります。「自分の教科ではこんな設問だった」という一言だけでも大きな価値があります。受験報告はこちらから(2〜3分・匿名OK・お礼の特典PDFあり)。
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