こんにちは、金井志津乃です!

福岡市の二次試験は模擬授業と面接だけと聞きました。じゃあ小論文の対策はいらないですよね?

受ける区分によります! 福岡市の論文試験は第1次試験の科目で、令和9年度採用では教職大学院修了者と、スポーツ・芸術区分の方だけが受けます。でもここが大事——その方たちにとって論文は唯一の筆記試験で、配点100点。しかも令和8年度採用の基準では、Dランクだと不合格でした。令和8年度採用の公表基準では、この区分は「不可とする基準」に該当しない受験者を第1次試験合格としていました(令和9年度の扱いは、当該年度の公表資料で確認してください)。この記事で「型」を覚えてしまいましょう。
この記事では、福岡市立学校教員採用候補者選考試験の論文試験について、実施要項・選考基準と、市販の全国版過去問集に残る4年度分の出題から、内容・評価のされ方・書き方をまとめます。
この記事の根拠
- 令和9年度福岡市立学校教員採用候補者選考試験(一般選考試験)実施要項=論文試験の対象区分・内容・過去問の閲覧方法
- 福岡市教育委員会が公表した令和8年度採用の選考基準=配点100点・ランクA〜D・不可とする基準・評定の観点
- 市販の全国版過去問集の福岡市分から、4年度分・10問の出題を整理(課題文は転載せず、提示された調査のテーマと形式のみ)。令和5年度採用は収録がありません。
- 執筆:金井志津乃(高校地歴の教員採用試験に新卒合格・高校教員として6年半勤務・教採スクール「教員の学校」運営・YouTubeチャンネル登録者1.7万人・大学講演・教採専門誌「教員養成セミナー」への執筆経験)
この記事は各自治体の実施要項等をもとに記載しています。ただし、日程や制度の変更、こちらの見落としがないとは言い切れません。最後は必ず、各自治体の実施要項をご自身でご確認ください。
基本情報|誰が・いつ・何点で受けるのか
| いつ | 第1次試験(令和9年度採用は令和8年7月12日・日曜)。第2次試験には小論文はありません。 |
| 誰が受けるか | 選考区分Ⅲ「教職大学院修了者」と選考区分Ⅴ「スポーツ・芸術」のみ(令和9年度採用)。選考区分Ⅰ「一般」・Ⅵ「障がい者」は教養試験+専門試験、Ⅳ「社会人等」は令和9年度採用からSPI3、Ⅱ「正規教員・講師等経験者」とⅦ「大学推薦」は免除または専門試験のみ。 |
| 出題内容 | 要項の記載は「教育に関する問題を出題」の一行のみ |
| 配点(令和8年度採用の選考基準) | 100点(教養試験50点・専門試験50点と並ぶ、第1次試験の最大配点) |
| 評価(令和8年度採用の選考基準) | A〜Dの4ランク。A=優れている/B=標準を上回る/C=標準レベルである/D=論旨、論文構成等が不十分である。 |
| 不可とする基準(令和8年度採用の選考基準) | Dランク。1科目でも不可があれば、他の科目の得点にかかわらず不合格。 |
| 合格の決まり方 | 教職大学院修了者・スポーツ・芸術は「試験科目の得点がいずれも不可とする基準に該当しない受験者を第1次試験合格者とした」(令和8年度採用の選考基準)=Dを取らなければ通過できた |
| 試験時間・字数 | 試験時間は実施要項・選考基準には記載がありません(市教委ホームページの「第1次試験の実施内容等について」もご確認ください)。字数は、市販の過去問集に残る出題の多くが「800字程度」と記録されています。 |
| 過去問の閲覧 | 福岡市情報プラザ(福岡市役所1階)で、令和9年度採用の実施要項では令和5〜7年度実施分の問題・解答を閲覧・コピーできます(実費自己負担/午前9時〜午後8時)。令和9年度採用分(令和8年度実施)の閲覧方法は令和8年12月頃に市教委HPへ掲載予定とされています。 |
※出典:令和9年度実施要項「2 選考区分・採用区分及び試験の概要」「6(5)試験科目」「10 試験問題の閲覧」/福岡市教育委員会「令和8年度 福岡市立学校教員採用候補者選考試験(一般選考試験)における選考について」

ここ、すごく大事なので繰り返します。令和8年度採用の選考基準では、教職大学院修了者とスポーツ・芸術区分の一次は「順位を競う試験」ではありませんでした。令和8年度採用の選考についての公表資料には、この区分は「各選考区分における試験科目の得点が、いずれも『不可とする基準』に該当しない受験者を、第1次試験合格者とした」と書かれています。つまりAを狙う必要はなく、Dを回避すればいいという考え方です。Dの定義は「論旨、論文構成等が不十分である」——論旨と構成です。中身の斬新さではなく、問われたことに、筋の通った構成で答えること。ここが一次を越える鍵になります(令和9年度の選考方法は、当該年度の公表資料で確認してください)。
評定の観点は4つ|「読み取り」と「対応」の両輪
論文試験の評定の観点(令和8年度採用の選考基準より)
「教員としての資質・適性について、課題把握・分析力/課題対応力/文章構成・表記力/論理的思考力等の観点から評定する」
この4つは、そのまま答案の設計図になります。とくに「課題把握・分析力」と「課題対応力」が別々に立っていることに注目してください。福岡市の論文は、後で見るように「グラフから課題を読み取る」パートと「教員としてどう取り組むか」のパートが、設問の中で明確に分かれています。片方だけ厚く書くと、もう片方の観点が評価されにくくなると考えられます。両方に、意識して字数を割いてください。
過去の出題テーマ|「福岡市のグラフ」を読ませる型が続いています(確認できた範囲)
市販の全国版過去問集に残る福岡市の出題を、年度別に整理しました。課題文は転載していません。提示された調査(グラフ)のテーマと形式だけを載せます。
| 採用年度 | 選考区分 | 提示された調査(グラフ)のテーマ | 形式 |
|---|---|---|---|
| 令和4年度採用 | 社会人等 | 精神性疾患を原因とする病気休職者(教員)の推移 | 800字程度 |
| 令和4年度採用 | 教職大学院修了者 | スクールカウンセラー(SC)への相談等の状況 | 800字程度 |
| 令和6年度採用 | 社会人等 | 福岡市の正規教員の年齢構成(令和4年5月現在) | 800字程度 |
| 令和6年度採用 | 教職大学院修了者 | いじめの発生件数(認知数) | 800字程度 |
| 令和7年度採用 | 社会人等 | 福岡市立学校の教職員のワークライフバランス(仕事と生活の調和) | 800字程度 |
| 令和7年度採用 | 教職大学院修了者 | 福岡市内の小学校6年生と中学校3年生の「自分にはよいところがあると思う」(自己肯定感) | 800字程度 |
| 令和7年度採用 | スポーツ・芸術 | 福岡市内の小学校6年生の「地域行事への参加」 | 800字程度 |
| 令和8年度採用 | 教職大学院修了者 | 小・中学校の「1カ月の平均読書冊数」 | 800字程度 |
| 令和8年度採用 | スポーツ・芸術 | 不登校児童生徒数 | 800字程度 |
| 令和8年度採用 | 社会人等 | 福岡市内の小学校6年生と中学校3年生の「普段(月〜金曜日)のテレビゲーム時間」 | 800字程度 |
※当ブログが市販の全国版過去問集の福岡市分から整理。収録は令和4・6・7・8年度採用の4年度分で、令和5年度採用は収録がありません(「5年分」ではありません)。社会人等の出題は令和8年度採用までのもので、令和9年度採用からこの区分はSPI3に変わりました。それでも出題の型を知るうえでは同じ価値があるので、まとめて掲載しています。
型は3点セット。確認できた福岡市の出題は、この型が続いています
10問すべてに共通する構造がこれです。
福岡市の論文試験の型
- 福岡市の教育データブック等に掲載された、児童生徒や教職員に関する調査の結果がグラフで提示される
- 「あなたは、このグラフからどのようなことを課題として読み取りますか」(=課題把握・分析力)
- 「また、その課題について、あなたは教員としてどのように取り組みますか」——しかも自分の経験を踏まえて(教職大学院修了者は「これまで教職大学院で学んだことを踏まえて」、スポーツ・芸術は「これまでのスポーツや芸術に関する経験を踏まえて」)(=課題対応力)

4年度分・10問すべてがこの型です。ということは、本番までに何回も何回も書いて、書いたものを自分でも何度も読み、他の人にも読んでもらってたくさんフィードバックをもらうことが、いい文章を書く上で大切だと思います。テーマはいじめ・不登校・読書・地域行事・ゲーム時間・自己肯定感・教員の年齢構成・ワークライフバランス・SC・病気休職——子どもの実態と教職員の働き方の2系統から来ています。
グラフの読み取りで書くべき3つのこと
「課題として読み取る」と言われて、グラフの説明だけで終わってしまう方が少なくありません。「◯年から◯年にかけて増加している」——これは読み取りではなく、写し取りです。評定の観点は「課題把握・分析力」。次の3段階で書いてください。
- 事実——グラフから読み取れる数字の動き(1〜2文で十分。ここに字数を使いすぎない)
- 解釈——その動きの背景に何があると考えられるか。ここが「分析」。社会の変化・子どもの生活の変化・学校の状況を1つ結びつける。
- 課題の言語化——「したがって、◯◯が課題であると考える」と、はっきり一文で言い切る。この一文が、後半の取り組みとつながる軸になります。
800字をどう書くか|私が受講生に伝えている手順
① まず「構想メモ」を作る
構想メモを取る重要性は大きいです。構想メモには3つの効果があります。論点のズレを防ぐ/途中で筆が止まることが少なくなる/大幅な書き直しが少なくなる。そしてもう一つ、意外と大きいのがメンタル効果です。周りの受験生がカリカリ書き始める音の中で、自分だけメモを書いていると不安になりますよね。でも構想メモを書いておくと、書き始めてから大幅に消すことが少なくなります。「これでいい」と決めてから書き出すほうが、結局は速いんです。
② 指定字数の8〜9割は必ず書く
800字程度なら、最低でも640〜720字。字数を満たしていないものは、読みもせずにスルーされている場合があるらしい、と言われています。ただし、それぞれの自治体がどのような方針で採点しているかは分かりません。福岡市の不可の定義は「論旨、論文構成等が不十分である」——途中で終わっている答案は、構成が不十分と判断される可能性が高いと考えられます。時間内に最後まで書ききることを、何より優先してください。
③ 課題文の言葉を、そのまま使う
小論文は「論点がズレやすい」ので注意が必要です。これを防ぐ一番簡単な方法が、課題文で問われている言葉に線を引いて、その言葉をそのまま自分の文章に入れること。福岡市なら——「このグラフから課題として読み取れるのは〜である」「私は教員として、〜に取り組みたい」「教職大学院で学んだ◯◯を生かして〜」。設問の語をそのまま使えば、採点者は「問われたことに答えている」と確認しやすくなると考えられます。
とくに福岡市は「これまでの経験を踏まえて」が、確認できた過去の出題のすべてに入っています。教職大学院修了者なら大学院での学び、スポーツ・芸術区分なら競技や表現活動の経験。ここを書き忘れると、設問が求める要素の一つに答えていないことになります。取り組みのパートは、自分の経験 → だからできる具体的な手立てという順にするのがおすすめです。
④ NG例文とOK例文の差を、一度体感しておく
私が小論文の添削指導をしていると、NG例文のようになっている人の方がほとんどです。NG例文では次の4つの点を指摘しました。
- 社会的背景の理解が浅い——なぜその課題が今起きているのかを書けていない
- 問題文の要求を満たしていない——「読み取り」と「取り組み」の片方しか書いていない、経験に触れていない
- 主語と述語のねじれ——一文が長すぎて、読み返すと意味が通らない
- 結びが抽象的で、本旨と関連が薄い——「子どもたちのために全力を尽くしたい」で終わってしまう
この4つは、NG例文とOK例文を並べて見ると一発で腹落ちします。合格レベルの答案を「読んで理解する」だけでなく、一度自分の手で書き直して体感しておくこと。それが本番の再現性につながります。
着地点は「福岡市のあるべき教員像」
- 向上心を持ち、子どもの学ぶ意欲と学力を高める学習指導ができる教員
- 人権感覚にあふれ、子ども理解に基づいたあたたかい生徒指導ができる教員
- 危機管理意識を持ち、子どもの生命や身体の安全を確保できる教員
- 協調性を持ち、同僚や保護者・地域等と協働しながら教育活動を推進できる教員
- 社会性を備え、法令を遵守しながら体罰や飲酒運転等の不祥事を根絶できる教員
選考基準には「本市の教員採用候補者選考試験では、次の『教員像』を基本として選考を行った」と書かれています。論文の評定の観点も冒頭は「教員としての資質・適性について」。つまりこの5つに沿った答案は、選考の基本方針と合っていると言えます。
過去のテーマを、この5つに当てはめてみてください。いじめ・不登校 → 人権感覚/生徒指導。読書冊数・ゲーム時間 → 向上心/学習指導。地域行事への参加 → 協調性/協働。教員の年齢構成・ワークライフバランス・病気休職 → 協調性/社会性。SCへの相談 → 生徒指導/協働。どのテーマが来ても、着地はこの5つのどれかに置きやすいはずです。

結びを「子どもたちのために全力を尽くします」で終えるのは、本当にもったいない。「人権感覚にあふれ、子ども理解に基づいたあたたかい生徒指導ができる教員」を目指し、〜に取り組んでいきたい——このように自治体の言葉で締めると、抽象的な結びが一気に具体的になります。福岡市の教員像は5つとも短い一文なので、まるごと覚えてしまうのがおすすめです。
論文のあとに待っているもの
論文を突破したら、次は第2次試験の模擬授業と面接試験です(令和8年度採用の配点は模擬授業60点・面接試験90点)。しかも令和8年度採用の基準では、模擬授業・面接・対象者の実技のいずれにも不可がない者について、模擬授業と面接の合計点順で合否を決めていました。この基準では、論文でどれだけ良い点を取っても、二次には持ち越されません。一次を「Dを取らずに通過する」ことに絞り、残りの時間は全部二次に回す——これが教職大学院修了者・スポーツ芸術区分の時間配分の一つの考え方です。
■ 福岡市の二次試験|模擬授業と個人面接の内容・配点・出題傾向
■ 福岡市の特別選考と一次免除ルート|どの区分で受けるか
よくある質問
Q. 選考区分「一般」でも小論文はありますか?
A. 令和9年度採用では、ありません。選考区分Ⅰ「一般」の第1次試験は教養試験+専門試験です(令和8年度採用の配点は各50点)。論文試験があるのはⅢ「教職大学院修了者」とⅤ「スポーツ・芸術」のみ。第2次試験にも小論文はなく、模擬授業と面接試験(高等学校教諭は実技試験も)だけです。
Q. 社会人等の区分は小論文ではなくなったのですか?
A. はい。令和9年度採用の実施要項の冒頭に「昨年度からの主な変更点」として、選考区分「Ⅳ 社会人等」の第1次試験にSPI3(基礎能力検査)を導入と明記されています。試験会場は全国のテストセンター(リアル会場またはオンライン会場)で、受験票受領日〜7月12日の間で受験者が日を選べます。基礎能力検査の前に自宅等で性格検査を受検しますが、性格検査の結果は合否に関係ありません。ただし制度は年度によって変わりますので、必ず当年度の要項を確認してください。
Q. 過去問はどこで手に入りますか?
A. 福岡市情報プラザ(福岡市役所1階)で、令和9年度採用の実施要項では令和5〜7年度実施分の試験問題と解答を閲覧・コピーできます(実費自己負担。利用時間は午前9時〜午後8時、休館日は年末年始ほか臨時休館あり)。論文試験の問題は、令和8年度採用分が令和7年11月中旬以降に閲覧できるようになりました(令和8年度採用の選考基準)。令和9年度採用分(令和8年度実施)の閲覧方法は、令和8年12月頃に市教委HPへ掲載される予定と実施要項に書かれています。確認できた福岡市の論文はグラフ提示型なので、実物のグラフを一度見ておく価値は大きいです。
Q. 教職大学院の在学中でも受けられますか?
A. はい。令和9年度採用の選考区分Ⅲには2つの区分があります。区分A=教職大学院を修了した方、または令和9年3月31日までに修了見込みの方。区分B=令和9年4月1日〜令和10年3月31日の間に修了見込みの方です。区分Bで合格すると「令和10年度福岡市立学校教員採用候補者名簿」に登載され、採用は令和10年4月1日以降、名簿の有効期間は令和11年4月30日までとなります。つまり修了の1年以上前から受験できる仕組みです。必要書類(修了見込み証明書・在学証明書)は第2次試験の合格発表後、合格者のみ提出します。
Q. スポーツ・芸術区分の論文は、内容が違いますか?
A. 型は同じ(グラフ提示型・800字程度)で、確認できた過去の出題では「これまでのスポーツや芸術に関する経験を踏まえて」という条件が入っていました。教職大学院修了者は「これまで教職大学院で学んだことを踏まえて」。同じ条件が入った設問では、この一句を書き落とすと設問の要求を満たさない答案になります。なおスポーツ・芸術区分は、第1次試験の前に書類選考(実績のレベル・成績等の確認)があり、区分での受験が認められなかった場合は一般区分での受験になります。
Q. 何字くらい書けば安全ですか?
A. 過去の記録では「800字程度」という指定が多く見られます。「程度」の場合、私は指定の8〜9割以上をひとつの目安としてお伝えしています。800字程度なら、最低でも640〜720字、できれば720〜800字を目安に。構成の配分は、①グラフの読み取りと課題の言語化に3割、②課題の背景・分析に2割、③自分の経験を踏まえた取り組みに4割、④福岡市の教員像に着地する結びに1割——これで4つの評定の観点を押さえやすくなります。ただし試験時間は実施要項・選考基準には記載がありませんので(市教委ホームページの当年度の「第1次試験の実施内容等について」もご確認ください)、まずは時間を測らずに書き上げ、慣れてきたら、60分・50分など時間を区切って縮める練習をしてください(本番の試験時間は公表されていないため、目安です)。
この記事は受験者の皆さんの報告で育ちます
福岡市の論文試験については、試験時間が実施要項・選考基準に載っていません(市教委ホームページの当年度の案内もご確認ください)。受験された方の一言が、次の受験生にとって決定的な情報になります。福岡市を受験された方は、ぜひ教えてください。ご報告いただいた方には、お礼に「合格発表のあとどうなる?」ガイド(PDF)をお渡ししています。
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