こんにちは、金井志津乃です!

福岡市の二次試験って、模擬授業と面接だけなんですよね? それなら気楽かな……と思っているんですが。

科目は2つ(+高校は実技)です。でも中身を見ると、模擬授業の前に30分の学習指導案作成があり、授業のあとに口頭試問がある——つまり「授業を作る力」「授業をする力」「授業を語る力」を一続きで見られます。しかも令和8年度採用の配点は面接90点・模擬授業60点。この2つ(高校は実技の可否も)の結果で合否が決まるので、むしろ一発勝負の濃い試験なんですよ。
この記事では、福岡市立学校教員採用候補者選考試験の第2次試験(模擬授業・面接試験)について、実際に受験した方からご提供いただいた「生の質問」と、福岡市教育委員会が公表している要項・選考基準・志願状況をつき合わせて、内容・流れ・傾向と対策をまとめます。
この記事の根拠
- 受験者1名・3件の実録(令和6年度採用/高等学校 情報)。福岡市は、令和8年10月時点で報告が1名分しか届いていません。「1名の報告」であることを正直にお伝えしたうえで、そのぶん公表資料(実施要項・選考基準・志願状況・第1次試験合格者一覧)を徹底的に読み込んで補っています。
- 市販の全国版過去問集から福岡市分を独自に集計し、全国と比べた出題傾向を確認(個別の設問は転載していません)。面接の収録は令和4年度〜7年度採用の4年分です。
- 日程・科目・配点・評定の観点は令和9年度採用(2026年夏実施)の実施要項および福岡市教育委員会が公表した令和8年度採用の選考基準と照合済み
- 執筆:金井志津乃(高校地歴の教員採用試験に新卒合格・高校教員として6年半勤務・教採スクール「教員の学校」運営・YouTubeチャンネル登録者1.7万人・大学講演・教採専門誌「教員養成セミナー」への執筆経験)
出願(電子申請):4月1日(水)〜4月30日(木)午後5時/郵送申込は4月27日(月)消印有効
自己PRシートの提出:受験票の到着日〜6月30日(火)消印有効
第1次試験:7月12日(日)(自然災害等で実施が困難な場合は予備日7月19日に実施する可能性があります)/選考区分「社会人等」はSPI3を受験票受領日〜7月12日の間で選択
第1次試験合格発表:7月下旬(令和9年度採用は7月27日に受験番号を掲載)
第2次試験:8月17日(月)〜8月25日(火)のうち1日または2日間
第2次試験合格発表:10月上旬(令和9年度採用は10月9日に公表)
第1回採用手続き会:令和8年10月下旬〜11月上旬予定(要項の記載)/第2回:12月下旬予定/配置校通知:令和9年3月下旬予定
福岡市で見落としてはいけないのが、自己PRシートの提出期限が6月30日——つまり第1次試験(7月12日)より前だということ。一次の結果を見てから書くものではありません。受験票が届いたら、すぐ書き始める書類です。そしてこの自己PRシートが、二次の個人面接で質問のもとになることがあります。
※出典:令和9年度実施要項。
令和10年度採用の日程は、要項の公開後に更新します。
■ 福岡市の自己PRシートの書き方|個人面接で深掘りされる欄を逆算する
この記事は各自治体の実施要項等をもとに記載しています。ただし、日程や制度の変更、こちらの見落としがないとは言い切れません。最後は必ず、各自治体の実施要項をご自身でご確認ください。
福岡市の二次試験|30秒でわかる基本情報
| 構成 | ①模擬授業(学習指導案作成・模擬授業・口頭試問) ②面接試験(個人面接) ③実技試験(高等学校教諭のみ)(実施要項「7 第2次試験(4)試験の内容」) |
| 日程 | 8月17日(月)〜8月25日(火)の間で1日または2日間を予定。会場は第1次試験合格者に通知(福岡市立学校を予定)。 |
| 学習指導案作成 | 1単位時間分の略案を、当日提示される問題および資料をもとに30分間で作成(1単位時間は小学校・特別支援学校小学部が45分、中学校・特別支援学校中学部・高校が50分。個人資料の持ち込みは禁止)。小学校教諭は出題する教科、特別支援学校教諭は出題する領域・教科が事前に市教委HPで公表されます。 |
| 模擬授業 | 作成した学習指導案に関する授業の一部を教室で実施。30人程度の児童生徒がいる想定(特別支援学校教諭は4〜8人程度)。令和9年度の「模擬授業注意事項」では、問題文の指示に沿って10分間授業を行うこと、黒板またはホワイトボードを使って必ず板書すること(教室は電子黒板ではありません)、教具類の持ち込みは禁止であること、評定員が児童生徒の立場から意見や質問をした場合はそれに対応した指導を行うことが示されています。受験者報告でも10分・試験官2人で、試験官が生徒役として質問してくることもありました。 |
| 口頭試問 | 模擬授業のあとに、学習指導案および模擬授業に関して実施。受験者報告では5分程度。 |
| 面接試験 | 個人面接。「模擬授業とは別に実施します」と要項に明記。受験者報告では20分・面接官3人(うち1人はカウンセラーのような方)。市販過去問集の記録でも「面接官3人・20分」が最多です。 |
| 実技試験 | 高等学校教諭のみ。「全ての教科において実技試験を実施」。内容は第1次試験終了後に市教委HPに掲載。 |
| 集団討論・集団面接 | ありません。令和9年度採用の実施要項に記載はありません。 |
| 論文試験 | 二次ではなく第1次試験で、しかも一部の選考区分だけに実施されます(詳しくはこちら) |
| 結果発表 | 10月上旬に合格者へ文書通知+受験番号をHP掲載。不合格者には試験の成績が文書で通知されます。 |
※出典:令和9年度福岡市立学校教員採用候補者選考試験(一般選考試験)実施要項。
口頭試問の時間と面接官の人数は受験者報告および市販過去問集の記録によるもので、要項・注意事項には記載がありません(学習指導案作成30分・模擬授業10分は令和9年度の「模擬授業注意事項」の記載です)。
配点は面接90点・模擬授業60点(令和8年度採用)|面接が6割を占めます
福岡市は、第2次試験の結果発表後にその年の選考基準を市教委ホームページで公表しています。令和9年度採用の選考基準は令和8年10月時点で未確認のため、ここでは令和8年度採用(2025年夏実施)の基準を見ます。二次の中身がかなり分かります。
| 面接試験 | 90点 |
| 模擬授業 | 60点 |
| 実技試験 | 可・不可の2段階評価(点数化されない) |
合否の決め方も公表されています。採用区分ごとに、「面接試験」と「模擬授業」の合計得点の高い者から合格者を決定。さらに各科目に「不可とする基準」があり、一つでも不可があれば他の科目の得点にかかわらず不合格です。
第2次試験の「不可とする基準」(令和8年度採用の選考基準より)
- 面接試験がDランク/模擬授業がDランク/実技試験が「不可」
- 面接試験・模擬授業のランクは、A=優れている/B=標準レベルである/C=標準をやや下回る/D=標準を下回るの4段階

ここが福岡市の一番のポイントです。150点満点の6割が面接。模擬授業は「落とされない」だけでも意味がありますが、面接は点を積む場所。そして「B=標準レベル」というランク定義に注目してください。Bは普通、Aは優れている。令和8年度採用の基準では合否は合計点の順位で決まるため、決まった合格ラインはありませんが、両方で不可(D)を避けたうえで、配点の大きい面接で上積みを狙うのが一つの考え方です。
評定の観点も公表されています。ここは回答を組み立てるときの設計図になるので、そのまま覚えてしまってください。
| 面接試験 | 本市の「あるべき教員像」の要素を基本とし、主として教育的愛情・向上心・社会性・コミュニケーション力等の観点から、教員としての資質、適格性、人物性を総合的に評定する |
| 模擬授業 | 学習指導案作成、模擬授業及び口頭試問を通して、教科等に関する専門知識・授業構想力・学習指導力・生徒指導力を総合的に評定する |
※出典:福岡市教育委員会「令和8年度 福岡市立学校教員採用候補者選考試験(一般選考試験)における選考について」。
令和9年度採用の選考基準は、実施要項では第2次試験結果発表後に公表するとされています(令和8年10月時点では本記事に反映していません)。
模擬授業の観点に「生徒指導力」が入っていることに気づきましたか。授業をするだけでなく、その30人(想定)の教室をどう見ているかまで見られていると考えられます。ここは後ほど詳しく扱います。
面接当日の入室から退室までの流れは、こちらの実演動画が一番早いです。
福岡市の倍率|令和9年度採用の志願状況と一次結果
福岡市教育委員会が志願状況で公表する志願倍率=志願者数÷採用予定者数です。一方、実施要項の巻末に載る競争倍率=受験者数÷名簿登載者数で、こちらは大学連携特別選考・教職経験特別選考の実績を含みません。数字を比べるときは、どちらの定義かを必ず確認してください。
令和9年度採用(2026年夏実施)の志願状況です。小・中・特別支援・養護・栄養の合計で志願1,541人/採用予定276人=志願倍率5.6倍、高等学校教諭は志願91人/採用予定15人=6.1倍。前年(令和8年度採用)はそれぞれ3.5倍・6.6倍でしたから、小中特養栄は1年で3.5倍→5.6倍に跳ね上がっています。
| 採用区分 | 志願者 (R9採用) | 採用予定 (R9採用) | 志願倍率 (R9採用) | 志願倍率 (R8採用) |
|---|---|---|---|---|
| 小学校教諭 | 608人 | 110人 | 5.5倍 | 3.9倍 |
| 中学校教諭(計) | 560人 | 115人 | 4.9倍 | 2.8倍 |
| 特別支援学校教諭(小学部) | 85人 | 15人 | 5.7倍 | 3.1倍 |
| 特別支援学校教諭(中学部・計) | 75人 | 30人 | 2.5倍 | 1.9倍 |
| 養護教諭 | 155人 | 4人 | 38.8倍 | 17.9倍 |
| 栄養教諭 | 58人 | 2人 | 29.0倍 | 15.3倍 |
| 小中特養栄 合計 | 1,541人 | 276人 | 5.6倍 | 3.5倍 |
| 高等学校教諭 合計 | 91人 | 15人 | 6.1倍 | 6.6倍 |
※志願者数は「大学連携特別選考」の併願者を除く。
出典:福岡市教育委員会「令和9年度福岡市立学校教員採用候補者選考試験(一般選考試験)の志願状況について」/R8採用欄は「令和8年度〜志願状況について」(なお令和9年度版の「参考(昨年度の状況)」欄では、同じ令和8年度採用の数字がわずかに小さく記載されています。当ブログはその年の資料の本体の数字を採用しています)
倍率が上がった最大の理由は、志願者が増えたことではなく採用予定者数が減ったことです。志願者は1,487人→1,541人とほぼ横ばいなのに対し、採用予定は422人→276人と大きく絞られました。ここは冷静に受け止めておきたいところです。
そして第1次試験の合格発表は令和8年7月27日。公表された受験番号一覧を当ブログで採用区分別に数えると、合計971人でした(当ブログ集計)。この数字には第1次試験の全部免除者(正規教員・講師等経験者の一部、大学推薦)が含まれますので、市の公表値とそのまま比較しないでください。それでも、採用予定291人(小中特養栄276+高校15)に対して二次に971人——ここからおよそ3.3人に1人という構図が見えてきます(実際の合格率ではありません)。
福岡市は第1次試験の合格者数を採用予定者数の何倍にするかを公表しています(令和8年度採用の選考基準)。
| 小学校教諭 | 採用予定者数の3倍程度 |
| 中学校教諭 | 採用予定者数の2倍程度 |
| 特別支援学校教諭(小学部・中学部) | 採用予定者数の2倍程度 |
| 養護教諭 | 採用予定者数の7倍程度 |
| 栄養教諭 | 採用予定者数の6倍程度 |
| 高等学校教諭 | 採用予定者数の5倍程度 |
※合格者数は全部又は一部免除者を含む。
出典:福岡市教育委員会「令和8年度 福岡市立学校教員採用候補者選考試験(一般選考試験)における選考について」

この表、受験生の皆さんにはものすごく大事です。中学校と特別支援は「2倍程度」——つまり令和8年度採用の目安(免除者を含む)に当てはめると、二次に進んだ約2人に1人が採用予定枠に入る計算です(実際の合格率ではありません)。一次を突破する価値がものすごく高い試験なんです。逆に養護教諭は7倍程度だったので、二次で差がつきやすいと考えられます。自分の採用区分がどちらのタイプかを知ったうえで、時間の配分を決めてくださいね。
なお、令和9年度採用の第2次試験合格者は令和8年10月9日(金)に公表されました(公表されたのは受験番号です)。令和8年10月時点では人数などの結果資料は公表されていません。公表後に当ブログで追記する予定です。教科別の推移や、文部科学省の全国調査との比較は、倍率の専用記事にまとめています。
■ 福岡市の倍率|令和9年度採用の志願状況と推移(教科別・校種別)
■ 福岡市の特別選考と一次免除ルート|大学連携・教職経験・講師経験者・社会人等
① 模擬授業|指導案30分・授業10分(令和9年度採用の注意事項)と口頭試問(実録では5分程度)
福岡市の模擬授業は、3つの部品がひと続きになった試験です。要項では「学習指導案作成/模擬授業/口頭試問」の内容が示されていますが、時間配分や当日の流れは、受験者の報告を読むとよく分かります。
実録|当日の流れ(高等学校 情報/令和6年度採用)
- 教科書見開き1ページのコピーと指導案の紙を渡され、30分で指導案を作成
- 別の教室へ移動して、10分間の模擬授業。試験官の先生が2人いて、たまに生徒からという形で質問される。
- 口頭試問が5分程度
報告者からは「どの教科も流れは同じでした」とのコメントも添えられていました。
要項の記載と重ねると、指導案は「1単位時間分の略案」で、提示される問題および資料をもとに作成します。実録の「教科書見開き1ページのコピー」が、まさにこの資料にあたります。そして模擬授業は教室で、30人程度の児童生徒がいる想定(特別支援学校教諭は4〜8人程度)。試験官が生徒役として質問を投げてくるのは、この「想定」を本気で作りにいくための仕掛けだと考えられます。
口頭試問で実際に聞かれたこと(実録)
- 今回の模擬授業は何点だったか、またその理由を教えてください。
- 学習指導要領関係の質問
- 無気力な生徒に対しての対応を教えてください。
- 情報という教科で伝えたいことを教えてください。(受験教科に関する質問)

この4つは、模擬授業の評定の観点に対応していると読めます。「何点だったか、その理由」=授業構想力(自分の授業を設計者として評価できるか)。「学習指導要領関係」=教科等に関する専門知識。「無気力な生徒への対応」=生徒指導力。「その教科で伝えたいこと」=学習指導力の土台になる教科観。口頭試問は模擬授業の「おまけ」ではなく、4つの観点を回収する本番だと思ってください。
とくに「今回の模擬授業は何点だったか」は、福岡市を受けるなら想定しておくと安心な質問です。市販の過去問集の集計でも、個人面接のほうでも「実習での授業は何点だったか」という記録が残っています(令和5年度採用・1件)。福岡市は「自分を採点させる」質問が出ることがある自治体のようです(実録1名と過去問集の記録による)。
「何点でしたか」への答え方(私が受講生に伝えていること)
- 点数は「70点」前後を目安に、具体的な数字を言う。「100点です」だと自己評価が難しい人に、「30点です」だと自信のなさに見えることがあります。
- できた70点分(加点理由)を先に、短く。「導入で生徒の身近な例から入れたこと」など、意図した設計を1つ。
- 足りない30点分(減点理由)と、その改善策をセットで。「後半、生徒の反応を確かめる時間が取れませんでした。次は◯◯の場面で一度手を挙げてもらいます」——改善策まで言えて初めて「授業構想力」の証明になります。
10分の授業をどう組むか|私が採用試験でやったこと
私自身、高校地歴の採用試験で模擬授業を受けて合格しました。そのときに意識していたことと、その後たくさんの受験生を指導してきて分かったことをお話しします。まず先生としての雰囲気——声の大きさ(教室のどこに座っていても聞こえるか)、目線(隅々の席まで目を配れているか)、話すスピード、姿勢。福岡市は「30人程度の児童生徒がいる想定」と要項に明記されているので、目の前の試験官ではなく、想定されている30人に向けて話せているかが評価に関わると考えられます。これは一人で練習しても分かりにくいので、家でいいので自分の授業を自撮りして見返すのが一番です。私自身、YouTubeの動画を撮っていて「自分、全然イケてないな」と思うことがしょっちゅうあります。撮っているときには気づかなかった改善点が、映像だと一目で分かるんです。
次に授業の構成。①「この授業の終わりに、こういうことが説明できるようになっていたら目標クリアだよ」と目標を最初に明示する。②「まずこれを見て、次にこれが分かると、最後にこれが説明できるようになるよ」と1時間の流れを最初に示す。先を見通せないと集中力を保つのが難しい子にとって、有効な手立てでもあります。③興味関心を引きつける導入——子どもの身近なもの、子どもの文化に切り込む。
私が実際にやった例をお話しします。産業革命の模擬授業で、いきなり「みんな、自分の制服の繊維をよく見てみて」と言ったんです(生徒役はおらず面接官だけの場で、演技として行いました)。「この1枚の布は、1本1本の糸がどんなふうに交わっている?」と絵に描いてみるよう促し、「この布を手作りするの、めちゃくちゃ時間かからない?」と。そこから産業革命に入っていきました。子どもの目の前にあるものから入る——これが導入の一番簡単で強い型です。福岡市は小学校・特別支援学校小学部は45分、中学校・特別支援学校中学部・高校は50分の授業の略案を作成し、問題文の指示に沿って10分間の授業を行う形式ですから、この導入部分の設計が効きます。
ここからは、基本ができている前提で「他の受験生より高い評価を得るために必要なこと」です。私が個別指導で見てきた中では、少ない採用枠で合格された方が次の3つをクリアしていた例がありました。
- 子どもが見える——その人の模擬授業を見ると、普段どんなふうに子どもと関わっているかが透けて見えます。子どもを見る視線の温かさ。そして、想定している子どもの反応と疑問がリアルかどうか。「こんなにスムーズには進まないだろう」という想定で組んだ授業は、現場でもうまくいきません。福岡市の試験官が生徒役として質問してくるのは、まさにここを試しているのだと思います。
- 意図が見える——なぜそのタイミングでその発問をしたのか。なぜその立ち位置なのか。なぜそこで板書したのか。一つひとつの行動に理由がある授業は、面接官に伝わりやすくなります。福岡市は模擬授業の直後に口頭試問があるので、意図を言葉にできるかどうかが点数に影響すると考えられます。
- その人らしさが光る——この授業を通して子どもに何を学んでほしいか、何を感じてほしいか。知識を注入するだけの授業ではなく、「この内容を学んで、どうするの?」に自分の答えを持っていることです。実録の口頭試問にあった「情報という教科で伝えたいこと」は、まさにこれを聞かれています。
落ちる授業と受かる授業の違いは、実演で見るのが一番早いです。「帝国主義」を扱った説明中心の授業と、「日清戦争」を扱って生徒に当事者として考えさせる導入の授業を比べています。
小学校志望の方へ|出題教科は「事前に分かります」
ここは福岡市の大きな親切ポイントです。実施要項に、こう書かれています。
「小学校教諭については出題する教科を、特別支援学校教諭については出題する領域及び教科を、事前に福岡市教育委員会ホームページに公表します」(令和9年度実施要項「7 第2次試験(5)模擬授業」)
つまり、小学校志望なら、公表された教科に絞って準備する方法があります(公表の時期は市教委HPで確認してください)。公表された教科について、指導案の型(本時の目標/評価規準/導入・展開・まとめ/板書計画)を30分で書ききる練習に集中できます。30分は、思っているよりずっと短いです。書式を体が覚えているレベルまで反復してください。
② 個人面接|20分・面接官3人、自己PRシートが起点
面接試験は要項に「福岡市立学校教員としての資質や適性等に関する質疑を実施します。※模擬授業とは別に実施します」とだけ書かれています。中身は受験者報告と、市販過去問集の傾向から見ていきます。
待機室で書く「アンケート用紙」の報告があります
実録|面接の流れ(高等学校 情報/令和6年度採用)
- 面接待機室で、1枚のアンケート用紙に回答する。「自分を表す言葉と思われるものを3つ選んでください」というもので、テキパキしている/責任感がある/明朗/おおらか/正直など、いろいろな言葉から選ぶ形式。
- 面接室でその用紙を面接官へ渡す
- 面接官3人(うち1人はカウンセラーのような方)で面接20分
この用紙、市販の過去問集の福岡市分でも複数の年度にわたって「自己理解チェックシート」という名前で記録が残っています。「どれを選んだか」「なぜそれを選んだか」「丸をつけたものの根拠となるエピソードはあるか」——という方向で掘られる、というのが4年分の記録から見える共通点です。

これは知っているかどうかで差が出るタイプの情報です。待機室で初めて見て、緊張の中で適当に3つ丸をつけると、あとで根拠を聞かれて詰まってしまうことがあります。「自分を表す言葉を3つ、それぞれエピソードつきで」を、事前に決めておいてください。そして3つのうちどれか1つに絞れと言われたときのために、「一番の自分」を決めておくこと。実録でも「1つ選ぶならどれですか。またこの言葉をどういう意味でとらえてこの言葉にしましたか」と聞かれています。
実際に聞かれた質問(実録・全13問)
高等学校 情報/令和6年度採用(2023年夏実施)・20分・面接官3人
- 天気の話(緊張をほぐすため)
- 資格は取っていますか。
- 苦労した経験を教えてください。→ その経験をどう克服しましたか。
- 先輩の先生や同僚との接し方で気をつけていることは何ですか。
- 担任だったらどんなクラスにしたいですか。→ そのクラスにするためにどんなことをしますか。
- 自己PR文からの質問
- ストレスと思うことは何ですか。→ ストレスを解消する方法を教えてください。
- アンケートで3つ〇があるが、1つ選ぶならどれですか。また、この言葉をどういう意味でとらえてこの言葉にしましたか。
- もうすぐ面接が終わろうとしているが、これまでの面接は何点ですか。またその加点の理由と減点の理由を簡潔に教えてください。
- 最後に30秒で言いたいことを話してください。
この13問は、面接試験の評定の観点に対応していると読めます。「苦労した経験→どう克服したか」=向上心。「先輩・同僚との接し方」=社会性。「担任だったらどんなクラスに→そのために何をするか」=教育的愛情。「アンケートの言葉の意味」「最後に30秒」=コミュニケーション力。観点から逆算して準備すれば、点につながりやすい試験だと考えられます。
そして最後の2問——「これまでの面接は何点ですか」と「最後に30秒で」。模擬授業の口頭試問でも同じ「何点でしたか」が出ています。福岡市は自己評価を求められることがある自治体のようです。「最後に30秒」への答え方は、この動画で3パターン実演しています。
③ 出題傾向|全国と比べた福岡市の面接
市販の全国版過去問集から福岡市の面接分(令和4年度〜7年度採用の4年分)を集計し、全国と比べました。個別の設問は転載していません。あくまで「どのテーマが厚いか」を見るための数字です。
| テーマ | 全国と比べた傾向(確認できた範囲) |
|---|---|
| 志望動機 | 多め |
| ストレス・メンタル | 多め |
| 特別支援・合理的配慮 | 多め |
| 自己PR・長所短所 | 同程度 |
| 授業づくり | 少なめ |
| 部活動 | 同程度 |
| 学級経営 | 少なめ |
| 保護者対応 | 少なめ |
| 体罰・服務・不祥事 | 少なめ |
| ICT・端末/地域連携/不登校 | 確認できた範囲では見当たらない |
※当ブログが市販の全国版過去問集から独自集計。福岡市の収録は多くないため、傾向のぶれは大きい点はご承知おきください。
この表から、福岡市の個人面接の傾向が少し見えてきます(収録が少ないため、あくまで目安です)。
- 「授業づくり」の質問は、確認できた範囲では全国と比べて少なめ。模擬授業と口頭試問で授業に関することが問われるぶん、面接試験では授業づくりの比重が小さいのかもしれません(個人面接にも授業に関する質問の記録はあります)。面接試験は人物と経験に比重が置かれている傾向が見えます。
- 「ストレス・メンタル」は全国と比べて多め。実録でも「ストレスと思うことは何か」「解消する方法は」が連続で出ています。長く働き続けられるかを、福岡市は丁寧に確認していると考えられます。
- 「特別支援・合理的配慮」は全国と比べて多め。福岡市は小学校・中学校・特別支援学校に新規採用され、特別支援学校免許状を保有する方を対象に、日本学生支援機構の第一種・第二種奨学金の返還支援(年18万円×3年・最大54万円)を用意しているほど、特別支援教育に力を入れていると考えられます(令和9年度採用の実施要項の記載)。
- 追質問(→でつながる深掘り)は、確認できた範囲では全国と比べて多めです。一問一答では終わらないことが多い傾向です。

追質問が全国と比べて多めだというのは、「で、それは?」と掘られやすいということ。面接で初めて深掘り質問を考えるのではなく、自分が回答する内容に対して、常に自分で深掘り質問を自分に投げかけておくようにしてください。実録でも「苦労した経験→どう克服したか」「担任だったらどんなクラスに→そのために何をするか」「ストレスとは→解消法は」と、きれいに2段構えで来ていますよね。
深掘り質問に強くなるコツは、面接官が「知りたい順番」を先回りして準備することです。この考え方は大学講演で詳しく解説しました。
この記事は受験者の皆さんの報告で育ちます
福岡市は、令和8年10月時点で報告が1名分しか集まっていません。それでも「指導案30分・模擬授業10分・口頭試問5分」「待機室でアンケート用紙」「面接の最後に自己採点を求められる」といった、要項だけでは分かりにくいことが見えてきました。福岡市を受験された方は、ぜひ次の年度の受験生のために教えてください。ご報告いただいた方には、お礼に「合格発表のあとどうなる?」ガイド(PDF)をお渡ししています。
傾向と対策|実録と公表資料から見えた7つのポイント
- 令和8年度採用の基準では、各試験が不可でないことを前提に、「面接90点+模擬授業60点」の合計点の高い者から合格者を決定します。実技は可・不可の2段階で点数化されません。面接が6割——ここに一番時間を使ってください。
- 令和8年度採用の基準では、1つでもDランクがあれば、他が満点でも不合格でした。「得意で稼ぐ」より先に「Dを作らない」。模擬授業も面接も、まずB(標準レベル)を確実に取る設計を。
- 福岡市は「自分を採点させる」質問が出ることがある。模擬授業の口頭試問でも、面接の終盤でも「何点でしたか、その理由は」。点数+加点理由+減点理由+改善策をセットで言えるように。
- 待機室のアンケート用紙は事前に準備できる。「自分を表す言葉」を3つ、それぞれエピソードつきで。1つに絞れと言われたときの本命も決めておく。
- ストレス・メンタルの質問は全国と比べて多め。「一人で抱えない仕組みを自分で持っている」ことが伝わると安心材料になると考えられます。実際の解消法を具体的に。
- 特別支援の質問は全国と比べて多め。福岡市は特別支援学校免許保有者に奨学金返還支援を出すほど力を入れています。免許を持っているなら語れるようにしておくと安心です。
- 自己PRシートを起点とする質問がある。そのほか、当日のアンケートや面接の自己評価などを尋ねられた報告もあります。追質問は全国と比べて多め。想定問答は一問一答ではなく「深掘りツリー」で作る。
■ 福岡市の自己PRシートの書き方|個人面接で深掘りされる欄を逆算する
福岡市は実施要項の1ページ目に「本市の求める教員像」を5つ掲げています。令和8年度採用の選考基準では同じ5項目が「あるべき教員像」と呼ばれ、面接試験の評定はこの5つを基本として行われると明記されています。
- 向上心を持ち、子どもの学ぶ意欲と学力を高める学習指導ができる教員
- 人権感覚にあふれ、子ども理解に基づいたあたたかい生徒指導ができる教員
- 危機管理意識を持ち、子どもの生命や身体の安全を確保できる教員
- 協調性を持ち、同僚や保護者・地域等と協働しながら教育活動を推進できる教員
- 社会性を備え、法令を遵守しながら体罰や飲酒運転等の不祥事を根絶できる教員
実録の質問と並べてみてください。「先輩の先生や同僚との接し方」は4番目、「担任だったらどんなクラスに」は2番目、「無気力な生徒への対応」(口頭試問)も2番目に、それぞれきれいに対応しています。回答の最後を、この5つのどれかに着地させる意識を持つと、面接全体に一貫性が出ますよ!
また、『生徒指導提要(改訂版)』には現代の教育課題に合わせた生徒指導の在り方が書かれており、模擬授業の評定の観点にある「生徒指導力」や、口頭試問の「無気力な生徒への対応」に答えるうえで必読です。福岡市の教育施策は福岡市教育委員会のページから確認できます。
よくある質問
Q. 福岡県や北九州市と一緒に受けられますか?
A. 福岡市・福岡県・北九州市は、それぞれ完全に別の試験です。同じ福岡県内でも、実施主体・試験科目・提出書類はそれぞれ異なります(令和9年度採用は一次試験の日程が同じ日です)。福岡市の一次は7月12日、二次は8月17日〜25日。他の2つも令和9年度採用は第一次試験が同じ7月12日(日)なので、7月12日に実施される一次試験を重複して受験することはできません。ただし一次免除や、福岡市の社会人等区分のSPI3のように受験日を選べる場合は、ほかの日程も含めて併願の可否を確認してください。対策の中身が大きく違うので、どこを本命にするかは早めに決めておくことをおすすめします。
■ 福岡県の面接・二次試験はこちら
■ 北九州市の面接・二次試験はこちら
Q. 小論文(論文試験)はありますか?
A. 第2次試験にはありません。論文試験は第1次試験で、しかも選考区分「教職大学院修了者」と「スポーツ・芸術」だけに実施されます(令和9年度採用の実施要項)。選考区分「一般」「障がい者」は教養試験+専門試験、「社会人等」は令和9年度採用からSPI3(基礎能力検査)に変わりました。令和8年度採用の選考基準では、配点は論文100点と大きく、Dランクだと他がどれだけ良くても不合格でした。
■ 福岡市の論文試験(小論文)|出題テーマの型と800字の書き方
Q. 集団討論・集団面接はありますか?
A. ありません。令和9年度採用の実施要項に、集団討論・集団面接の記載はありません。第2次試験は模擬授業(学習指導案作成・模擬授業・口頭試問)、面接試験(個人面接)、実技試験(高等学校教諭のみ)の3科目です。他の自治体と併願する方は、この違いを押さえておくと準備がブレません。
Q. 実技試験は誰が受けますか?
A. 高等学校教諭のみです。実施要項には「高等学校教諭は、全ての教科において実技試験を実施します」「全ての高等学校教諭の志願者は、実技試験の受験が必要です」と明記されています。内容は第1次試験終了後に市教委HPに掲載されます。参考までに、令和8年度採用の選考基準に載っている評定の観点は、地理歴史(地理)実技・数学実技が「入試問題を解答後、その解説を行うことを通して専門知識及び技能(教科指導力)」、保健体育実技が「陸上競技、球技、器械運動、ダンス、武道の5種目」、工業実技が「製作図を作成する」でした。年度によって対象教科も内容も変わりますので、必ず当年度の発表で確認してください。
Q. 得点は教えてもらえますか?
A. 不合格になった場合は、試験の成績が文書で通知されます(実施要項「8 試験結果の通知等(3)」。第1次試験・第2次試験のいずれも同じ)。要項に記載があるのは不合格者への成績通知です。また選考基準等は第2次試験結果発表後に市教委HPで公表されるので、翌年に再挑戦する方は「自分の点」と「その年の基準」を突き合わせて次の設計図を描けます。
Q. 過去問は手に入りますか?
A. はい。実施要項に「令和5年度から令和7年度に実施した試験問題及び解答は、福岡市情報プラザ(福岡市役所1階)で閲覧及びコピーができます(実費自己負担)」と書かれています。利用時間は午前9時〜午後8時。模擬授業の問題の一部も閲覧できる年があります(令和8年度採用の選考基準に記載あり)。令和9年度採用分(令和8年度実施)の閲覧方法は、令和8年12月頃に市教委HPへ掲載される予定と実施要項に書かれています。
Q. 併願(第2希望)した場合、二次はどうなりますか?
A. 福岡市は小学校教諭↔特別支援学校教諭(小学部)、中学校教諭↔特別支援学校教諭(中学部・同一教科)の併願ができます。第1次試験は第1希望の科目だけを受験しますが、第2次試験は、第1次試験で合格した採用区分の試験科目を受験し、両方に合格した場合は両方の区分の試験科目を受験する必要があります。一つでも受験しなかった時点で受験を辞退したものとみなされるので、注意してください。両方合格した場合は第1希望の合格者になります。
Q. 圧迫面接ですか?
A. 実録には「怖かった」「詰められた」という報告はありません。むしろ冒頭に天気の話(緊張をほぐすため)があり、面接官3人のうち1人はカウンセラーのような方だったと報告されています。ただし追質問で掘られるのと、終盤に自己採点を求められるのは、実録で確認できます。詰められていると感じないよう、深掘りされる前提で準備しておくことが大切です。答えにくい質問への答え方は、実演動画で確認できます。
面接の手応えが気になる方へ
福岡市は令和9年度採用で、二次が8月17日〜25日のうち1日または2日間、発表が10月上旬。1か月以上、結果を待つ時間があります。「あの答えでよかったのか」「模擬授業、何点だったんだろう」と何度も再生してしまう時期です。面接官の反応の読み方と、手応えがなくても受かる理由はこちらの記事にまとめています。
■ 面接官の合格サイン・不合格サイン|手応えがボロボロでも受かる理由
それでも結果が届かなかったときの進路の考え方も、先に知っておくと落ち着いて受験できます。福岡市は本市の講師経験者だけが受けられる特別選考が手厚い自治体なので、次の一手を考えやすい自治体です。
■ 教員採用試験に落ちたらどうする?進路の選択肢とやるべきこと
■ 福岡市の特別選考と一次免除ルート|大学連携・教職経験・講師経験者・社会人等
あわせて見たい面接・模擬授業対策動画
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